12年なんてあっという間『6才のボクが、大人になるまで。』

 主人公の少年が6歳(ブラウン管テレビでドラゴンボール見てる)ところから、18歳になるまで、12年間かけて撮られた映画。はじめて知ったとき、なにそれすごいじゃん、って思った。それはもうすごいな、と。一方で、なんかこう、映画館で観るには退屈しそうな内容なんじゃないか? と訝ったのも正直なところだ。
 結果から言うと、ぜんぜん退屈しなかった。変な風にドキュメンタリータッチだったりとか、そういうこともぜんぜんなかった。普通の映画として、作中の人物たち(もちろん「6才のボク」以外だって年をとるのだ)が描かれ、自然に物語が進んでいく。年をとったら役者チェンジ、という普通の手法でも成り立つ映画だ。たぶん。
 で、気づいてみたら6才のボクが大人(なにをして「大人」とするかはわからんが)になっとるのである。これはなにかこう、不思議な感覚だった。コンピュータによる映像加工で0歳から98歳まで一人の役者が演じました、なんてのがあったとしても、これにはかなわんなという感じがする。いや、たぶん。しかしまあ、賭けでもあったのかな、とか、やっぱり12年間1本勝負というか。主人公がすげえクソデブになったり、ドラッグでヨタヨタになってたりしたらアウトだ。最悪の場合死ぬことだってありうる。というか、他の主要人物についてだってそうだ。死んだらどうするんだ。あ、日本には『渡る世間は鬼ばかり』という例がありますか。描かれてないところで死ぬなり別離したことにすりゃいいか。
 ……とか、そんなのは些事であって、普通の映画として面白いという。どこらへんが? というと、なんというのだろうかアメリカという他所の国の「普通」かどうかはわからないが、ウェイ・オブ・ライフの一つのありようを同じ視線の高さから覗き見たような気分になれて。さらには時代時代の流行が自然に取り入れられてるところなんかもいいかな、とか。XBOXやってんな、とか、iPhone出てきたか、とかフェイスブックがどうこうとか……。
 んでもって、人生の結構重要なポイントとして描かれる教育というものかな。日本のそれがレールだとすれば、アメリカのは何車線もある道路みたいだなーとか。そんでもって、なんだろう、なんだかんだで生きられる空気みたなもんがあるのかな、とか。どうもそのあたり、やり直しの効かないところに落ちこぼれてしまったおれは思うのだ。最後の方に出てくる、母親の「(人生が)もっと長いと思っていた!」という本気か冗談かわからぬ嘆き、その重みである。いやはや。