「箸の持ち方」が話題になっているので、ちょっと参入したい。
おれは正しい箸の持ち方をしていない。だが、それに気づかれることなく20年以上生きた。気づいたあとも正しい箸の持ち方に「矯正」していない。
我が家は上流であったか、下流であったか。中流だろう。両親に一般的な常識があったかというと、あった方に思える。その上で、父は宝島の編集長をやっていたというので、やや変人ではあったが。ただ、父の家、というか祖父は京大出の博士号持ちで、おれは晩年のパーキンソン病患者としての面影しかしらぬが、多分に厳しい人であったという。
で、おれの箸の持ち方はこれである。
これで、「おかしいよな」と思った人は、箸の人である。
これをおっぴろげてみるとこうなる。
これで、おかしさがわかっただろうか。おれは、本来「人差し指と中指と親指」で持つべき上の箸を「人差し指と親指」のみでキープしている。中指は下の箸を固定するのに使われている。
おれはこれで、「自分は正しい箸の使い方をしている」と思い込んで生きてきた。家族や教師、あるいは同級生などから「お前の箸の使い方は変わっているよな」と言われたことはなかった。おれはおれ自身、「おれは正しい箸の使い方くらいできるのだ」と思って生きてきた。
が、親戚の集まりだったかなんだか忘れたが、「箸の持ち方」が話題になったとき、おれの異端がばれたのである。ばれた、というか、おれすら知らなかったのだが、おれの箸の持ち方は間違っていたのである。中指は、上? それ、すごく可動域狭くない?
おれはおれの箸の持ち方で、お豆をつまみ、移動し、離すことができる。だいたい、中指が挟まっていたら、箸の先がうまく閉じないではないか。そして、人差し指と親指だけで操作するから、より大きく開くことができる。
……これが正しくね? などというと集中砲火を浴びるだろう。とはいえ、おれはいまさら(発覚してからさらに20年くらい経っている)直すつもりはないし、直せる感じもしない。これは、そう覚えてしまったからそうなったという習慣もあるだろうし、おれの指が子供の手のように指が短い、という身体的な理由もあるのかもしれない。
ともかく、まあ、箸なんて好きに持てばいいんだよ。少なくとも下流国民のおれに、それで損はないね。文句あるやつは、ぶっ刺すぜ。以上。