長寿桜とはなんぞね?

長寿桜と名付けられた紫色の花を咲かせる花木が売られている。

 

こいつの正体はサクラではない。ジンチョウゲの仲間だ。正体はわかっている。フジモドキ、これである。

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Daphne genkwa、こいつだ。

これがどうも、「長寿桜」という名前で流通している。さらには、「別名:チョウジザクラ」などと買いてあるところもある。なんだそれは。

おれは、フジモドキ→「これじゃあ売れないから、『長寿桜』ということにしよう」→チョウジザクラ(Cerasus apetala var. tetsuyae)との混同が起こる、という流れかと思った。

が、『園芸植物大事典』を一応繙いてみたところ、フジモドキの別名にしっかりと「チョウジザクラ」と記されていた。中国原産のフジモドキが日本に入ってきて、チョウジザクラという別名を持っていたのは、古い話だったようだ。

となると、「チョウジザクラ」→「長寿桜」という流れになる。たぶんそうだろう。よくわからない。だが、多分、そういうことだろう。ちなみに、フジモドキについて『大事典』は「あんまり体質強くねえよ」というようなことが記されていた。どこが長寿か。

しかしまあ、世の中の植木屋、花屋、あるいは造園業者の植物名に対する意識のなさというのには、ときどきうんざりさせられる。「フジモドキ」では商売にならないよ、というのはわからないでもない。「ニセアカシアやハリエンジュでは売れないから、ミモザにしよう」とか、「ヒガンバナではどうにも暗いからリコリスでいこう」とか……。でも、サワラ‘フィリフェラ オーレア’(Chamaecyparis pisifera ‘Filifera Aurea’)の「フィリフェラオーレア」ばかり流通名になってしまって、「フィリフェラオーレア・ゴールデンモップ」という謎の名前で出回ったりしているのだ。ゴールデンモップ(Chamaecyparis pisifera ‘Golden Mop’)はフィリフェラオーレアの枝変わりの品種であって、園芸品種としては別物だろうに。ああ、もう。

まあ、とか言っててもしょうがねえよな。「ボックスウッド」と呼ばれるものが、セイヨウツゲの品種なのか、ツゲの品種なのかも意見が分かれるところだ。そんなの、どうでもいいって、春になれば新葉が開き、花が咲く。植物にとっては、どうでもいいことなんだよ、まったく。