植物の名前を知ってる方がモテると思う。銑鉄について知っているより植物の方がいい。
「あれはヘクソカズラの花だね」
「キチガイナスビの実がなっているよ」
「立派なヨグソミネバリだ」
「ママコノシリヌグイで責めちゃおうかな」
「ぼ、ぼくのオオイヌノフグリを……」
……モテないな。というか論外というかセクハラだ。
でも、こんな名前の植物があるのは本当だ。これはそんな植物についての本だ。
植物についての本。それがちゃんとした植物の本かどうか見分けるにはいくつか判別方法がある。
まずは、学名についての表記だ。学名の表記があればそれでまずいいが、その書き方にある。たとえばイノコヅチの学名は以下の通りである。
Achyranthes bidentata Blume var. japonica Miq.
こんな風に、斜体を使っていると信頼度は高い。え、var.とBlumeとかは? となるが、それは正体でいいのだ。あるいは、命名者名を略することも一般的なので、これでもいい。
Achyranthes bidentata var. japonica
こんな風になっていたら、信頼のできる植物の本といえる。斜体というのは別に学名表記の決まりではなく、本文から見分けをつけやすいように、ということだが、まあ日本語の本でも斜体にするぞ、という心意気がいい。あとは、基本的に和名はカタカナ表記。これ重要。
というわけで、この『ヘンな名前の植物 ヘクソカズラは本当にくさいのか』はいい植物の本だ。ヨグソミネバリについても、ちゃんと「アズサ」と「ミズメ」という別名、というか「アズサ」が標準和名なのかな、それを説明している。ちなみに、木材業界ではミズメザクラなんて呼ばれているが、それはやりすぎだと思う。
まあそれはいいとして、本書はともかく「ヘンな名前の植物」についての本なのだが、ずいぶん植物学寄りだ。というか化学式とかも出てくる。なるほど、クリの花のにおいがアレに似ているのはスペルミジンという共通の成分を含んでいるからなのですね、と。
あとは著者の専門領域がアレロパシー(ある植物が他の植物の生長を阻害したり、敵になる生物を遠のけたりする能力)なこともあって、紹介されている植物のほとんどにアレロパシー持ってるんじゃねえかと思ったりするが、まあそれもためになる。
しかし、アレロパシーとはちと違うが、クズ(Pueraria lobata)は、日本発の侵略種として知られるけど、除草剤に抵抗性があって、グリホサート(ラウンドアップ)の散布でかえって生長が促進するというのだから驚きだ。やっかいすぎだろ。
あとはなんだろうね、シネラリアとか。おれ、「シネラリア」ってなに? って思ったんだけど、サイネリア。「死ね」につながるので見舞いなどに使えないから、英語の発音を取ったという。和名はフキザクラ、フウキギク。
縁起が悪いといえばヒガンバナ。これ、別名、地方名が500~1000もあるという。異名の多さでは日本一とも言われているという。マンジュシャゲ、死人花、シレイ、幽霊花……。花屋では、外国で作出された品種を学名から「リコリス」として売ったりしているよな。まあこのヒガンバナもクセの強い植物で、強いアレロパシーを持っているし、人間が根を食ったら毒だ。毒だけど、毒抜きをしたら救荒植物として食べられる。
えーと、あとはなんだ、あとは本を読んでくれ。シクラメンの和名が「ブタノマンジュウ」だなんて初めて知ったな。そんなところ。
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とこでニッサって誰だ? 『植物のあっぱれな生き方 生を全うする驚異のしくみ』(田中修)を読む - 関内関外日記