アメリカの黒人はどう扱われたのか? 小説『地下鉄道』を読む

 

地下鉄道 (ハヤカワepi文庫)
 

ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞、カーネギー・メダル・フォー・フィクション受賞。
19世紀初頭のアメリカ。南部のジョージア州にある農園での奴隷少女コーラは、ある日、自由な北部を目指して農園から逃亡することを決める。轟々たる音を立てて暗い地下を走る鉄道、〈地下鉄道〉に乗って――。しかし彼女の後を、悪名高い奴隷狩り人リッジウェイが追っていた。

地下鉄道とは、実際に存在したものである。南部の黒人奴隷たちを、北部へ逃がすネットワーク。

地下鉄道 (秘密結社) - Wikipedia

して、本作では、その「地下鉄道」が、本当に地下を走る地下鉄道として描かれる。ある意味でファンタジー、もしくはSFである。

……であるが、なんというか、おれはSF的な盛り上がりを、小説の湧き上がるところを本作に感じ入るところはなかった。ただひたすらに、当時のことをよく調べ上げたのであろうという、その事実に目が行った。

それゆえのピュリッツァー賞、ということになるのだろうか、まあそれでもいいだろう。おれは本書を読んで、いわゆるBLMについて、かなり意識が変わったといっていい。

なんというのか、「ここまでやられて、やられ続けて、それが今に至ってたら、そりゃ黒人は怒ってるよな」というところだ。「怒ってるよな」で済まされないと抗議されたら謝るしかないが、そういうあたりである。

たまたまその時代に生まれてしまったアフリカ黒人のたどった道、その子孫のアメリカ黒人の味わった苦痛。それはたまたま現代に生まれてしまった白人が罪を負うべきかというと、罪があるかないかわからないが、たまたま現代に白人として生まれてしまった以上、負わなければならない何かがあるのだろうと思う。ともに、殺されるのがまっとうなほど恨まれて、見下されて生まれてしまったのだ。

これは、べつに黄色人種の日本人にも当てはまることだろう。中国人や韓国人は日本人を殺したいと思っているのだろうし、たまたまこの時代に日本人として生まれてしまった自分はその殺意に反論もできない。なぜならば、その昔、その時代に生まれてしまった中国人や韓国人がいるのだから。

原初の人間のたまたま力あるものが力ないものを力によって支配し、殺したところから始まって、その連鎖はとどまるところがない。日本人は中国人や韓国人に殺されるだろうし、一方で原爆や大空襲の復習としてアメリカ白人を、ロシア人を殺そうと思っている。人間の歴史は憎しみでとどまるところはない。おためごかしは無用。人殺しの顔をしろ、ということだ。

 

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