100日後に死ぬ『俺の家の話』

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おれと宮藤官九郎長瀬智也。おれが彼らの作品をテレビで見る。それだけの関係である。その関係がはじまったのは2005年のことだった。

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池袋ウエストゲートパーク』の再放送。これである。これでおれは宮藤官九郎が好きになり、長瀬智也が好きになった。このタッグのドラマは見てきた。

 

さて、『俺の家の話』だ。もうネタバレもないだろうが、内容について書くので、一応警告しておく。

 

能の人間国宝の家のプロレスラーの長男(プロディガルサン)が、家長の介護のために家に戻る。能の跡を継ぐことにもなる。ただ、プロレスへの愛も捨てがたく、覆面を被りリングに戻る。

ドラマ序盤から、家長、すなわち西田敏行がいつ死ぬのか、どのように死ぬのか、それを基底とした物語だった。ものすごく勘のいい人は早くから死ぬのは長瀬智也だと見抜いていたらしいが、それはレアなことだろう。

いずれにせよ、介護の問題、家の問題。予告された死の問題。そういう構図の話だった。しかし、100日後に死ぬワニは長瀬智也だった。たしかに最終回一個前には不穏さはあった。あったが、まさかこうするとは思わなかった。さくらさんという人生の伴侶になるかもしれない人もいて、別れた妻子との関係も悪くなく、能とプロレスをやって、生きていくものだと思わされていた。そういうことも、あるのだ。

そこに、簡単には幽明界を異にすることのできない世界が現れる。それは西田敏行の認知の混乱と相まって、なにやら本当に見事な最終回になった。

いや、最終回だけが見事なわけではない。本作は日付をはっきりと出し、時代をまさに現代に設定している。コロナウイルスが存在している。三種類のマスク。コロナのためのマスク、能の仮面、そしてプロレスラーの覆面。これが意味するのは……なんだろうね? わからないけど、なんとなくそういうところに「なにか意味があるかもしれないな」と思わせるだけでいいよな、と思う単純なおれである。

そうだ、長州力(本作の長州力よかったですね)に「相手の名前を呼ぶ」正式なリキラリアットを食らわせて、最後にマスクを脱いで終わる。果たして、その中身はどの寿一だったのか。寿一とはどういう人物だったのか。中身がないようなことを作中で言われていたが、プロレス愛は本物だったろう。しかし、実のところ家が本体だったのかもしれない。そういう意味で、放浪息子も臑齧かもしれない。

まあ、ともかく、気になってたけど見てないとか、いま初めて知ったから見たいという人は、有料配信で見られると思うので見たらいいと思うよ。

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で、最後に書くけど、本当に長瀬智也はもう役者をやらないのだろうか。まさに本日付でジャニーズ事務所を退所する、長瀬智也。音楽活動をするとか、裏方に回るとか、母の介護をするとかいろいろと話は出ている。

しかし、おれはもったいなくてしょうがないと思う。長瀬くんは、そりゃもうハリウッド進出してもおかしくない芯のある役者でしょう。おれはそう思うくらい好きだ。それこそ、何年かあとにでも、寿一のようにふらっとドラマや映画の舞台に帰ってきてくれていいのだぜ。ほんと。

 

 

俺の家の話

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