近藤ようこの『高丘親王航海記』を読み終える

 

おれに「好きな小説を五つだけ選べ」と言われたら、その一冊に入るのが澁澤龍彦の『高丘親王航海記』だ。澁澤龍彦世界の結晶であり、なおかつ澁澤龍彦自身の病気と死まではらんでいる。とはいえその筆致は軽快で自由。単行本も持っているし、文庫本も何度も読んだ。

その漫画版が、出た。

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で、このたびIVが出て完結となった。あの話が四冊で終わるのか、という気持ちもあるし、四冊で終わるよな、という思いもある。ひょうひょうと、淡々として、いい具合に力が抜けて、それでいても軸がしっかりしていて、引き込まれてしまう。おれはあまり漫画を語る言葉を持たないので、うまいこと説明できないが、とてもいい漫画だ。もちろん原作のよさあってのことだし、両方知らないという人には原作の方から読んで欲しいとは思うが(原作以前に澁澤世界を知っておけばさらに面白いというおせっかいまで言いたくなるが)、ここから入って、ここで終えてもいいだろう。その人にはその人の天竺がある。

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p.197より

そして、おれが大好きなこの一節を読むと、やっぱりちょっと笑って、ちょっと泣きたくなってしまう。また小説を引っ張り出して(おれの小さなアパートには本棚などというものはなく、本という本は押入れに積み重ねられている)、読みたくなってきた。見つからなかったら、三冊目、買うか。

 

 

この表紙はちょっとイメージが違う。