きみは崩れ落ちる神輿を見たことがあるだろうか。おれはある。あれは中学校のころの体育祭だった。なぜか神輿があって、喧嘩神輿のようなことをさせられたのである。クラス単位だったかなんだったか忘れたが、ともかく神輿を担がねばならなくなったのである。はっきり言って皆乗り気ではなかったように思う。ボリュームのない「わっしょい、わっしょい……」とともにグラウンドに出ると……すぐにヘナヘナと崩れ落ちたのである。皆が皆、「だれかが力を入れているだろう」と思っていた結果、だれも力を入れなかったのだ。面倒ながら担ぎ直しつつ、おれは皆が皆サボろうとすると本当に全体が崩れてしまうこともあるのだなぁと思った。
主語が大きくなる。この頃、この最近の日本について、あのときの神輿を思いださずにはおられんのである。もう、「だれかがやってくれるだろう」精神、「こんなん真面目に担いでもどうにもならんな」精神、そういうものが集まって、緩やかに、いや、それでもそれなりのスピードで崩れているような気がするのだ。責任の所在もなにもあいまいでぼんやりと空回りしているような政治や行政、質が高いとはいえなさそうなマスコミやそれを見るおれ、想像を絶する赤字のようなものを出す大企業……。なにかこう、日本に高揚感なんてものを感じたことは……バブルだった小学生くらいのころはあったかもしれないが……あんまりなかったな。それで、これからも無いだろうな、という感じがする。
皆が皆、もうあきらめてしまって、地面に置かれてしまった神輿。神輿は一人で歩けない。仁義なくそういうものだ。まあ、しかしそれも悪くない。みんなでペタンと校庭のグラウンドに座って、茶でも飲もう。もちろん、おれも積極的に消極的な担がない手の一人だ。まっさきに他人任せだ。もう好きにしてくれ。好きなように……。