一競馬ファンが見た『ウマ娘 プリティーダービー』

anime-umamusume.jpおれはスティールキャスト菊花賞を逃げるのを見て以来、強弱はあれども一応は競馬を見続けているので、競馬ファンを名乗ってみてもいいだろう。

そんなおれは三十路を過ぎてアニメを見るようになった。見るようになって、ついにこんな作品が出てきてしまった。『ウマ娘 プリティーダービー』。これである。

歴史上の有名人物、三国志や日本の戦国時代の武将の美少女化。そういうものがあるのは知っていた。三国志が元ネタだと、いまいち横山光輝三国志のおっさん顔が頭をよぎり、あまり得意なジャンルとはいえない。

が、おれにそんなことを言う資格はまったくない。なぜならば、おれはおれの見たすべてのアニメの中で『ストライクウィッチーズ』を一番に愛するものだからである。

したがって、今のおれの心境としては、『ストライクウィッチーズ』なんかより前にアドルフ・ガーラントの自伝やイルマリ・ユーティライネン著『フィンランド空軍戦闘機隊』を熟読していたり、映画『撃墜王アフリカの星』を見ていたりした人間が、いざ「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」に直面したときの気持ちといっていい。たぶん。偉大なるよしだみほの擬人化(?)ともまた違ったなにかなのだ。

というわけで、なにかムズムズしながら見始める。主人公はスペシャルウィーク。最初にレースシーンがあるのはサイレンススズカ。それに……と、たくさんのキャラが出てくるが、ワンポイントやなにかに勝負服のカラーを使ったりしているので、見分けることができる。

一気に二話。スペシャルウィークのデビュー戦は実際の設定に準じていたりして細かい。生徒会長室の標語がエクリプスにまつわる名言「Eclipse first, the rest nowhere.」だったりする。ちなみに生徒会長はシンボリルドルフである。

と、この作品、大人の事情はよくわからないが、天下の社台系が出てこない。三冠馬の紹介でもミスターシービーシンボリルドルフナリタブライアンときてディープインパクトオルフェーヴルもいない。して、そのような競馬世界とはどのようなものだろうか。

ウマ娘 プリティーダービー - Wikipedia

ここに並んでいる馬名を見てもらいたい。十分に多士済々で、しかもなんか渋い。妙な渋さがある。テイエムがオーケーならテイエムオオアラシもいいのか? ダイワがありなら、ダイワテキサスもいいのか? ダイゴウソウルとかフジヤマケンザンとか混じっていてもおかしくない感じがある(そうだろうか?)。ハルウララがいるのなら、地方馬もありか。コスモバルクは? トウケイニセイやモリユウプリンスがいてもいいだろうし、ロジータだって、ベラミロードだって……とか言い出すとキリがない。キリがないのが競馬のいいところだ。ゴールドヘッドにチャンスはないのか(かなり無理)。

とはいえ、競馬には悲劇もつきものである。そうだ、サイレンススズカライスシャワーの名前を見て、なにかこう、心に影が差すのだ。知っての通り、二頭ともレースで故障し、予後不良、すなわち安楽死になった馬だ。だから、スペシャルウィークのデビュー戦をなぞるくらいに現実とリンクしたこのアニメ、先が怖いのである。

……とはいっても、死ぬ、ということはないだろう。そう思おう。ただ、骨折して競争能力喪失という展開はあるかもしれない。いずれにせよ、なにかこう、競馬ファンとしてはちょっと心穏やかでないところはある。

と、こころをざわつかせるくらいに、このアニメ、意外といっては失礼だが、しっかりしていた。二話連続放送、夢中になって見た。あと、細江純子(cv.細江純子)さん、テレビで見ていて普段は普通の女性の声なのだけれど、声優さんのなかに入るとあんなに低く聴こえるのかと驚いた。いや、まあいい。ともかくこのアニメ、ゴール板まで視聴するのは確定の赤ランプである。

ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』STARTING GATE 01