さて、帰るか

 思わず時間を食ってしまうことがある。俺はネット上で読み物をするときに、それを強烈に感じる。それはときにまとまった文章であり、掲示板のログだ。紙の本を読んでいると、だいたいどのくらい時間を掛けているだとか、これから先掛かりそうだとかわかるものだけど、どうもパソコン画面の文字列はその按配がわからくなる。今日、十二時過ぎまで帰れなくなったのは、自動ニュース作成F朝日新聞の強引な勧誘事件の話題(http://news.2-3-0.org/comment/comment_200505_445.php)経由で知った、「新聞拡張員ゲンさんの嘆き」(http://www3.ocn.ne.jp/~siratuka/index.html)を読んでいたからだ。ちらほらと噂に聞く新聞拡張員の実体の一部が垣間見られる。いや、一部と言うにはボリュームがありすぎて、いっぺんに読みきるのはやめた。
 一人暮らしをはじめたのは去年の一月の終わり。横浜市中区にある単身者向けアパートで部屋数もアホみたいに多い。学生風の人も多いところだ。だから俺は、初めての一人暮らしにあたって、勧誘にしっかり対策せねば、と意気込んでいたのだ。ところがどうだ、今日に至るまで新聞勧誘はたったの三回、エホバの証人が二回といったありさまだ。これには正直肩すかしをくらった。
 新聞勧誘の内容もあっさりしたもので、二回はインターホン越しに「いりません」「そうですか」。しかし、もう一回はドアオープンしたのだっけ。確か土日の昼間で、俺は競馬を見ながら酒を飲んでいて、俺なりにけっこう酔っていたように思う。インターホンではなく、ドアを叩く音がするので、覗き穴から外を覗くと、若者が一人立っていた。全然私服という感じで、部屋間違いかと思って開けたのだ、チェーンもせず。そうしたら、何やら自己紹介みたいな感じで「今度このあたりで頑張っていこうと思ってるんで」みたいなこと言ってて、脳が機能していない俺はまだ勧誘とわからず「はぁ」「へぇ」みたいな対応。向こうは何度か「寝ていたんですか?すみません」と言うが、ますます要領を得ない。ようやく「三ヶ月でいいんで」というところで気が付いて、ちょっと断るとすぐに「すみませんでした」と引き下がってしまった。勧誘撃退には、一気に酒を呷るという方法がいいかもしれないが、酔って契約してしまう危険もあるかもしれない。あと、この話も日記につけた覚えがあるけれど、気にしない。
 俺のアパートに勧誘が少ないのは、立地条件だろうかと思う。アホみたいに階段を登らなきゃいけないし、原付で乗り込むのも面倒な場所。拡張団と販売所がかなり別物と初めて知ったが、販売所はここらあたりを拡禁にしているのかもしれない。あるいは、拡張員も面倒で来ないのかもしれない。もっと怖い別の理由があるのかもしれないけれど。
 しかし、新聞契約の恩惠には遠回しにあずかっている。両親が借家に引っ越ししている最中に勧誘員が来て、その場ですぐに契約したのだ。多分、二紙か三紙だろう。それで、アホみたいな量の洗剤を置いていったという。しかし、上の話を読んだ後では、契約後に感謝の気持ちで置いていくということがあるようには思えないが、まあ、そういうことで、俺は洗剤をまだ一度も買っていないのだった。
 読むのも時間が掛かるが、打つのも思わず時間が掛かる。さあ、アホなアパートに帰るか。