牛は彼らのすべての罪責を背負つて無人の地に行く

http://www.nikkansports.com/race/horseracing/deepimpact/p-rc-tp0-20061130-123591.html

 JRAは29日、ディープインパクト(牡4、栗東池江泰郎)を担当する牛屋重人獣医師に対し、栗東トレセン診療施設の貸付を6カ月間停止する厳しい処分を下した。トレセンの獣医師は収入の大半をトレセン業務に頼っており、そこで一切診療できなくなることで、貸付停止期間中はほとんど稼げなくなる。

 獣医師一人が負ふには重すぎる処分と思つた。幾分厩の中など知らぬ素人の私ではあるが、一連の報道を鑑みればさういふ風に感じずにはゐられないのである。抑も彼の地で競走馬に薬物を処方し、治療出来るのは、佛蘭西国の資格を持つた当地の獣医であるといふ話ではなかつたのか。薬物飛散の報告や寝藁の交換に至つては、一番身近な厩務員の領分ではないのだらうか。勿論、この獣医師に一切の過失や取るべき責任が無しとは言はぬ。しかし、たつた一人で、他の者を閉め出して治療したやうに考へるのも不自然であり、厩務員の処分はその責任者たる調教師が負つたと考へるにしても、やはり一種の不公平感は拭へない。
 無論、其ればかりでなく、JRAの思惑が透けて見えるやうな気もするのである。JRAが面子を潰された矛先を一人に向け、又、世間の負の印象を、この重い処分によつて彼に負はせて晴れ晴れと有馬記念のラスト・ランを迎へようというやうなことである。これもまた邪推に他ならないが、今まで競馬会がディープインパクトを祭り上げるのを「全く構はない」と思つてきた私にしてこの心変はり、此の所競馬によい話少なく、馬券も当たらぬ所為やもしらん。