人志松本のすべらない話13

 帰って座椅子に座ってたらたらチャンネル変えてたら、すべらない話みたいなのを放送しているのである。「あれ、スピンオフの再放送でもやってんのかな?」と考えてしまったが、松本人志が普通に出ており、ほかでもない本シリーズ最新版放送なのである。この番組にはこういうところがある。そして、私のアンテナ低いけれど、運はいいのである。
 今回、私が一番楽しめたのは、宮川大輔の銭湯ネタであった。<ちょっと不思議な感じのサドン・フィクション>とか<映画にできるんじゃね?>といったタイプの話も出るこの番組ではあるが、これは直球ですべらない話といえよう。下ネタではあるが、この規模のくだらない話といったところが、コンセプト通りではなかろうかと思わせる。そしてこの話、ギンギンに立った子供の性器にひかれて、思わず見に行ってしまう(……このような言葉使いだと、非常に危険なことのように思われるこのご時世)、その宮川のアクションから、この番組で醸成された彼の世界のスタートであり、期待通りの活躍をみせてくれる。こういった番組内要素やキャラが固定してしまうことは、ともすればマンネリにも通じるが、かといって何も積み重ならないのもつまらない。
 さて、その宮川を主題とした松本人志のネタも興味深かった。宮川とバイキング(元・水玉れっぷう隊……といっても、字面しか知らぬ)アキを主題とした話である。温泉旅行の一夜、宴も終わり、松本も横に伏せて目をとじていると、ただ二人起きている二人の会話が聞こえてくる。宮川が言う、「肛門見せてぇな」。……また、肛門の話である。私はまた驚いてしまう。なぜ、芸人はこんなにも肛門による交流を好むのか。次長課長の河本による後輩への肛門見せ強要、そしてブラックマヨネーズによるケツハブコンハブ)。なぜ、そうなのか。この点については文化人類学、生理学、精神医学、民俗学をはじめとした多方面からの研究が人類喫緊の課題であるように思える。
 話は変わるが、この日の放送でいちばん「おいしかった」のは誰であるか。私は冗談ではないジョーダンズ三又のような気がしてならぬ。不在の者が場を支配したのである。奇しくもアキの話の主役。もはや、オチは見えている。見えているが、聞き手も視聴者もそのクライマックスに向けて意識が集中させざるをえない。繰り返すが、オチは見えている。どうなるかだいたいわかっているのである。なのに、直截的に語られぬ境界線の上にあって場を支配するのである、三又が。これほど芸人にとって「おいしい」話はあるまい。このようなRGキャラが確立することにより、芸能界で一番大きなお宝の持ち主は誰か? などというレポートの仕事が回ってくるのである。そして、お笑い芸人のA的性格が明らかになりつつある中、三又が大きな位置を占めるであろうことを予言するのは、決して無理からざることなのである。

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