北京五輪、ここがよくなかった

 北京五輪が終わった。悪いところも多かった。箇条書きで。
×星野ジャパン。いくら言っても言い足りないほどの負。他の日本代表競技に感じたあれやこれやも吹っ飛んだ。
×閉会式。始まりとともに大仕掛け。エビチリ(開会式)の後に麻婆豆腐みたいな感じ。中華料理の良さは、食後にあっさり杏仁豆腐じゃないのかね。その後、ロンドン要素とお祭りムードだったけど、正直食い飽きた。
×開会式の偽装。やっぱりあれは面白くない。とくに、少数民族ギミックはやっちゃいかんだろうと思う。しかし、あの後ろめたさの無さは、たぶん本当に後ろめたいと思っていない。そのあたりの中国的合理主義を知らねばならんと思う。もし付き合うならば。
×会場の雰囲気。これは面白くなかった(……って、もちろんテレビ越しに限られた競技見ただけです)。俺がなんとなくこの手のスポーツイベント好きになったのは、いつだったかドイツだったかの世界陸上かなにかなのだけれど、これがもう会場の雰囲気が最高だった。もちろんテレビを通じてだけど、会場と選手が一体になってるようで、たとえば跳躍系の競技とかの音頭とかもきれいに自然発生してさ。それに比べて今回はそういうの無かった。日本へのブーイングが取りあげられがちだけれども、それ以前のベースとして、この点がよくなかった。中国の人たちがスポーツ観戦自体に慣れていないのだろうけれども、だからこそ、この残念さは声に出したい。棒高跳びの後ろとか、選手が拍手あおっても応えず、自分たちが大モニターに映ってることだけにキャーキャー騒いでて、あれはどうかと思ったよ(ドイツの旗持ってる白人とかも混じってたけど)。
×日本へのブーイング。ブーイング自体五輪に似合わない。それで、百歩か二百歩か譲って、中国対日本でブーイングするならまだわからないでもない。でも、中国以外と日本との対戦で、日本にブーイングってのは行き過ぎだろう。さらには、公式ボランティアがその音頭を取るというのが本当ならば、これはちょっともう唖然ではなかろうか。ところで、この扱いはどうも日本ばかりではないのだろうか。韓国も「五輪期間中では韓国が出場する試合で中国人が組織的に相手チームを応援していると伝えられた」なんて話もあるようだが(この記事の主題については、ようそんの見つけるやつがおるなっと)。
×チベット問題、ウイグル問題。俺は、ひょっとして、ひょっとして、五輪期間中に中共がこれみよがしな改善をアッピールしてみせるんじゃないかとか、そんな淡い期待を抱いていた。閉会式にダライ・ラマ法王が出るくらいのさ。そんな甘い連中じゃなかった。反省している。逆に弾圧激化という話すらあるくらいだ。結局、完全にこの点は中共が統制、鎮圧してしまった。選手に害のあるような事故が起こらなかったのは何よりだが、気味が悪いほどに何もなさ過ぎた。デモに対するロゲの発言とジェスチャー(文字に残さないための実に政治的な振る舞いに見えた)、あれが物語っている。この中国では怖すぎる。閉会式に及んでまだ中国の多民族アピールなど、吐き気がする。こんなことをしてきた国がどうなりそうなものか、知らないわけでもあるまいに。
×人工消雨。20キロ競歩の選手の「雨がしょっぱかった。汗を濃縮した感じ。頭皮がどうなるか、心配です」というのが、本当に関係あるかどうかはわからないが、いずれにせよ「雨が邪魔なら降らせなければいい」というこの合理性は、ちと気持ちよくない。SF妄想の好きな俺は、たとえば地球温暖化対策として「成層圏エアロゾル撒けばいいじゃない」みたいな、いかにも取り返しつかなそうなマッドサイエンス風味の発想を愛してやまないのだけれど、実際にやられると、ちょっと引くわ。
×中国人造風美女。これは功罪相半ばというか、まあ表彰式とかの美女さんたちなんだけど、なんだかちょっと怖くなる。「われわれはこれだけの均質的な美女くらいいくらでも揃えられるのだ」という、なんかもう皇帝の自慢みたいな。まあ、どの国だってそりゃまあ美しい人を配するところではあるけれども。
×というわけで、なんというか、「One World, One Dream」なる標語も「中国共産党の世界、中国共産党の夢」でしかねえような、そんなもんに付き合わされたような気もしてくる。もちろん、上のいいところに挙げたように、競技自体はもちろんたくさんの素晴らしいシーンはあった。でも、俺はどうも、それをたとい百個並べたとしても千個並べたとしても、大会として「いい大会だった」とは言えない。これが正直なところ。はたしてこのまま北京五輪が成功してしまっていいものかという懸念は消えなかった。マスコミも、開催中は書きたいことも書けないといった事情もあったろう(閉め出されたら商売にならないし、中共は普通にやるだろう)が、終わった途端に論調が厳しくなりつつあるようにも見えるし、しっかり総括してもらいたい。報道ステーションのあの白髮の奴には期待しないけど。