横須賀の基地の中に入ること(米軍編)

 さて、われわれは米軍基地を目指した。そもそも、米軍基地が当初の目的であった。広島原爆投下の日に、よりにもよって米軍のフレンドシップデーに出向く。忍辱の日本人である。

 出てこいニミッツマッカーサー! とうそぶいたところで、出てこられても困る。

 犬からして怖いのである。

 そして肉も怖い。まんじゅうも怖い。お茶も怖い。

 ビッグサイズのコークも怖い。……と、かんじんの写真がない。いかにもアメ公のピザというようなピザを食ったのである。やけに塩辛いアメリカンなピザである。オートミールと野菜ばかり食っているダイエット中の俺の食生活からしたら、一気に数日分のカロリーといっていい。アメリカンなピザにダイエットコーク。ただひたすら喉が渇く。もっとコークを、という気にもなる。コークといったらピザか、このピザめ!

 奥の方へ行くと、趣味の愛車を紹介するぜみたいなコーナー。

 あいにく最近は頭文字Dグランツーリスモもご無沙汰でして。

 車にウーファーを(飛び出せハイウェイ)。……って、最近なんか動画見たばっかりだな。まさにあれ。耳というより心臓に来る。マジやばい。しばらく前に立ってたら、心の病とか治るレベル。

 まあ、その前に心がぶっ壊れるかもしれないが。
 
 ……と、そんなことを考えていたら、声をかけられた。太った黒人の女性である。英語である。しかし、私は彼女が何を言ってるのかはわかったのである。俺のビッグサイズのコーラの容器を指さして「あなたはこれをどこで入手したのですか? ここですか?」というのである。まくし立てるように言うのである。ただ、俺は返答に困ったのである。何を言ってるのかはわかったが、何を聞きたいのかがよくわからなかったのである。なにかこう、咎められているように感じ、なにか置き引きのようなことを疑われているのだろうか、などと思ったのである。なんとか「ノー、ノー、ノットヒア、オーバゼア」と来た方を指さしたら、「オーケー、センキュー」と言うのである。
 要するに、でかいサイズのコークが飲みたかっただけなのか? たぶんそうなのだろう。俺は考えすぎたのか? 外国人とコミュニケーションをとることにまったく不慣れなので、必要以上に怖がったのか? まあ日本語をしゃべる人間に対応するのもいっぱいいっぱいなのでそれもあるだろう。ただ、同行者がはたから見ていても、なにか俺が怒られているように見えたという。怒ったようにでかいコーラをどこで買えるのか聞いてくる人間も、この世界にはいておかしくはない。


 まあしかし、率直な感想を言うと、はっきりいって軍服を着た兵隊さん以外のアメリカ人(たぶん)の皆さん、太り過ぎの人多すぎ。人種、性別問わず。もうちょっと、トーフとか、コンニャクとか食おうぜ。余計なお世話か。

 と、奥の方へ。あ、もうすっかり艦船の見学のことは忘れているというか、どこでやってるのかもわかんなかった。

 まあしかし、完全に空気というか、雰囲気というか、なにかが違うのだぜ。

 フェンスの向こうはアメリカなのだぜ。なにか造りが違うのだぜ。悪く言えば雑、良く言えばおおらか。

 Kokowa Occupied Japan desu.

 猿島も近く見えるのだぜ。

 しかし、こんだけたくさんの人間を、居住区的なところとはいえかなりフリーダムに入れてしまう感じというか。

 ふーん、なんだろうな。なんだろうね。もし日本的なものとアメリカ的なものがあるとしたら、俺はどっちも苦手だぜ。

 それにしても、普通にアメリカに行くことのできる時代に、俺はなんなんだろうね。まあ、怖くて神奈川県から出ることも年に二度くらいだが。

 人が宇宙に行く世紀になのだけれどね。

 まったく。

 あんたらはどう思う? つーか、立ってるだけで日本人女子からモテモテだな、あんたら。

 そして早食い大会。

 チョップスティックスを使ってジャパニーズヌードルを食う。マンコソバ! とか間違って絶叫したりすればよかったのに。

 さすがにそれはないか。ないね、バイバイ。

 

 さて、日も落ちてヴェルニー公園。

 「ひゅうが」健在。人もぼちぼち。

 この時間のこの公園は初めてだ。

 花火、なのだった。米軍基地内でも見学できるが、帰ることにしたのだった。足も疲れたし、ピザの後遺症で喉が渇いてしかたないのだ。

 しかしまあ、米国軍人はでかかったな。強そうだったな。あんなのとよく短足日本兵は戦ってみせたものだ。

 一方で、あの律儀な自衛隊員を思い浮かべては、ああいう男たちが組織的にきちんと戦闘をしかけてくるのもたまらないだろうな、などと想像し、まったく、花火はこのくらい空いているのがいいよな。うん、実にいい。場所取りしてぎゅうぎゅう詰めなんてなんか間違ってるんだ。ここは穴場だし、悪くないよ。そしたら、柵の方にいた親子連れの中から、小さい子がこっちにとことこ来て並んで座るんだ。「こっちの方がよく見えるよ」だって。こっちが帰るときになって、女が「これに座る?」って、俺らが座ってた東スポの競馬欄を一枚譲ったんだ。「男の子っておもしろいね」だってさ。あのガキ、競馬ファンにならねえかな。日曜日の競馬も、丸山がナイスプレイしたんだぜ。丸山侯彦の息子だぜ。

 いずれにせよ、三脚もレリーズもなしで花火など撮れるものかよ。まあ、花火を見るつもりもなかったのだけれど。

 なんの話をしていたのだっけ。俺は日に焼けて真っ赤になってしまった。
 それじゃ、おしまい。