- 作者: 半村良
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/05/18
- メディア: 文庫
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半村良のなにがすげえって……って、ほかに『妖星伝』と『産霊山秘録』とあと「なんとか伝説」一冊か二冊くらいしか読んだことないんだけど、まあいい。なんだろうか、この地べたの日常社会、この『石の血脈』でいえばまあ昭和社会とかいうことになるんだろうが、まずそこんところに足がついていて、そっから高く遠くに飛んだり、あるいは深く暗いところに潜ったりすんの。で、そこんところの地べたにえらいリアルがあって、たとえば昭和サラリーマンなら深く共感するところがあったりするところから、こう永遠に飛躍するところがある。あるいは、彼らやわれらをとりまく社会のありよう、世界のありよう自体をそのまま伝奇の構造の中にぶっ込むというか、重ね合わせるというか。このあたりうまいよなーって。
だから、SFとか伝奇っつっても、ふわふわしてねえんだな。『石の血脈』んなかで、おれがハッと思ったのは「権利には明確な境界があるが、権力には明確な境界がない」(手元にないで書いてるから大意)ってふと出てきたあたりだったりして、なんか唸ったりしてね。
それでもって、解説(おれ持ってるのハルキ文庫版)読んでみれば、半村良は社会経験のストックがなきゃいけねえってんで、あえていろんな職に就き、なおかつ他のライバルのいないところを狙おうってんで、国枝史郎的の伝奇ロマンを復活させようとしたとかで、そのあたりだよなって思ったりして。まあ、なにがそのあたりかっていうとそのあたりなんだけど。そんで、その窮極が、人間社会どころか地球生命のありようまで飛躍して、なおかつ行ったまんまにならない大著『妖星伝』か、などと思うのだけれども。
ま、そんなわけで、たとえば澁澤龍彦がさらっと観念的に書いたりする「犬狼都市」とかもすきなおれだけれども、ちょっとますます半村良読んでやろうかなどとも思った次第。
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- 作者: 澁澤龍彦
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
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