- 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
- 発売日: 2010/12/03
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笠原和夫は自らの著書で、この『暴力金脈』を描くにあたって、この日本という国の暗部の深さと広さを思い知ったというようなことを書いていた(ような気がする)。これからは、一人の総会屋を書くにもどれだけの背景が必要とされるのか、と。なるほど、掘り下げていけば、総会屋とヤクザ、ヤクザと警察(同年に『県警対組織暴力』か)、それに政治家に官僚に大霊界を見据える丹波哲郎がおり、一本の映画で描ききれるものには限度もあるだろう。
というか、1973年のピンボールもとい1975年の総会屋というものについて、どこまで理解できたかどうか……というと、おれがわりと理解できたのは笠原の著書で取材のために実際に「並んでみた」話などわりと細かく知っていたからだが、というあたりもあるか。
しかし、「総会屋」というとなにか懐かしい感じに聞こえるのはなんでだろうか? 幼少期あたりによくニュースになっていたからだろうか。昭和の残り火のような印象はある。すばらしく信用のおけるウィキペディア先生曰く、平成の今の世に400人人くらいいるらしい。野菜ホールディングスって何かね?
まあいい。映画はどうだったか。スピード感があって引きこまれた。が、松方弘樹がどんくらいのスピードでのし上がっていったのかがややわかりにくい。師匠の言いつけを守って雨の中喉を鍛えるシーンはあったが。予告編など見るに、「勉強」の成果を出したりするシーンもあったようだが、カットされたのかどうか。
そしてラストだ。「ここで終わらせるのか!」という、そういう幕切れ一発。多田富雄に言わせればスーパー・システムというべき国の、経済の暗部に切れ込めない以上、個人というものとの対比で一発食らわせるしかないのか、というところかどうか。メガネを外す若山富三郎。金が人を狂わせるっつーだけではないところとかね。
というわけで、どういうわけで、わりとメーンテーマ曲はコミカルで、猫泥棒(わりとリアルな描写で猫好きとしてはウヘェってなる)から綿密に下っ端総会屋から描いていってというところで、行き着くところの東京のサラリーマン世界、裏社会、人と人とが織りなす綾と面白かったぜ、と。だけどだんだろうね、その滑稽さもなにも、なにか景気のいい時代の話だというか、そんなふうに見えてしまうのも事実。十分に獣臭いラーメンもといハンバーグすら出てくるのに、『闇金ウシジマくん』の前にはえらく明るく見えてしまうのだった。おしまい。
>゜))彡>゜))彡>゜))彡
……同監督、同脚本家。