おれもユーチューバーになろうと思う

おれもユーチューバーになろうと思う。おれはユーチューバーになって金持ちになる。やりたいことをやって生きる。おれはもうこんな仕事は嫌なんだ。いくら働いたってお金にならない。ほんとうにやりたいことじゃない。おれの小さなころの夢を思い出そう。おれはユーチューバーになりたかったんだ。生まれついてのユーチューバーだ。生まれたときから配信していた。新生児室でチャンネル登録をせまった。おれはユーチューバーだったんだ。それがなんでこんな狭くて暗く、寒い部屋で働いているんだ。手はかじかんで、立ちつづけの足も腰もいたい。休憩時間になると目まいがとまらない。これはユーチューバーか? いや、ユーチューバーじゃない。この世はユーチューバーとそうでないものにわかれている。あいつらはユーチューバーで、おれたちはユーチューバーじゃない。でも、おれもユーチューバーになれば、あいつらになれるんだ。あいつらはタワーマンションに住んで、フェラーリに乗っている。おれは家賃四万七千年のワンルームアパートに住んで、黒い自転車に乗っている。スーパーマーケットの帰り、おれはユーチューバーになろうと思った。あいつらはスーパーマーケットに行かないし、おれはスーパーマーケットに行く。ひどい話じゃないか。おれはスーパーマーケットには二度と行かない。おれはユーチューバーになるから、もうスーパーマーケットで三割引きシールの貼られた黒酢がけ肉団子を買うこともないんだ。二度とない。二度とスーパーマーケットには行かない。なぜならおれはユーチューバーだから。ユーチューバーはどこで夕飯の材料を買うのだろうか。決まってる、ユーチューバーは外食をする。パーティーをする。タワーマンションに寿司職人を読んで、毎夜寿司を食べている。そのようすをインスタグラムにアップする。それはまるでシャンパンカラーの日々、ユーチューバーの日々。名誉も、財産も、金も、女も、名誉も、金も、フェラーリも、タワーマンションも、クルーザーも、女も、名誉も、金も、ぜんぶ手に入れられう。なぜならおれはユーチューバーだからだ。ユーチューバーになれば夜はいつもスウィート。おれたちの夜は寒く、具の少ない味噌汁をすするだけだが、ユーチューバーはすすったりしない。すするなんてみみっちいのは、おれたちがおれたちだからだ。ユーチューバーはもっと豪快に飲みほすんだ。熱い味噌汁なんてなんてことはない。それどころか味噌汁なんてみみっちいものなんて口にしない。ユーチューバーならミネストローネとか飲むんだ。高級なミネストローネで、高級な味がするし、ユーチューバーは高級なものしか口にしないんだ。ユーチューバーになれば、寿司をミネストローネで味つけして、シャンパンで流し込んでスウィート。ベリー・ベリナイス。ナイスでないのにユーチュバーにならない理由なんてありはしない。ユーチューバーにならないやつがいることが信じられない。五億円とか普通だし、二億円とかへいちゃらだ。一円パチスロとはおさらばで、福富町のカジノとか行くし、それを配信したら負けても収入になるのがユーチューバーだ。テレビからも誘いがかかるし、コラボとかする。コラボしたらすごいし、ユーチューバーはコラボする。コラボはいい感じだし、コラボは大きい。コラボはユーチューバーだといっていい。フェラーリもコラボだし、寿司を食べるのがユーチューバーだ。すごく高い、かっこいいアルマーニを着て、ベンツは二台持っている。黒いベンツと白いベンツで、偶数の日は黒いベンツに乗る。隣には美女が乗っているし、ユーチューバーだからカーナビとかもすごいたくさん着いていて、パーティー現場にもあっという間につく。パーティーにはシャンパンだし、寿司職人が出張してくるらしい。寒い部屋はもうごめんだし、ユーチューバーになればいい。ユーチューバーにならない人間のことは信じられないし、おれは今まで信じられないことで苦しんでいた。おれもユーチューバーになろうと思う。