フィクション作品の鑑賞と前提知識についてのメモ

この間、こんな話題を見た。

togetter.com

おれはこれについて、物語の解釈力とは少し違うメモを残した。リンク先でも、ちょっとだけ言及のあったことだ。

もしも自分が「ドラクエ的RPG」について全く無知だとしたら、物語以前に『フリーレン』に興味を持てたかわからない。現におれはオンラインRPGを全く知らないので、それに寄り過ぎている作品は見る気がしない。

 

物語、ストーリーがわかるかどうか以前の話。『葬送のフリーレン』は既存の「ドラクエ的」(ドラクエよりもっとオリジナルがあるとか、後の世代では違う作品だとかあると思うんですが、まあそれは適当に脳内で置き換えてください)なファンタジー世界を前提としている。ベタな「勇者一行が魔王を討伐」という話がまず前提。その後に残った超長命エルフの後日譚。そこが『フリーレン』の特徴。

 

で、もしも自分が「ドラクエ的RPG」を全く、本当に全く知らなかったとしたら、『フリーレン』わかったかな? というか、そもそも『フリーレン』観たり、読んだりしなかった。しようとしても、やっぱりわけわからんだろうな、という感じはする。むろん、そのあたりわからなくても『フリーレン』は楽しめる、という人もいるだろうし、よくできた作品だからそういう人も巻き込んでの人気かもしれない。

 

でも、やっぱり前提、お約束、これがあるのは間違いがない。もちろん、ジャンル作品について、それがないもののほうが少ないかもしれない。まあとりあえず『フリーレン』はドラクエ的、(和製?)ファンタジーのなんとなくの知識が前提とされているようには見える。

 

いわゆる「異世界転生」のジャンルはその一歩先を行っていて、ファンタジー世界に現世から転生するときに、主人公が「これが異世界転生!」みたいに口に出したりする。もちろん、見る人も「ああ、異世界転生なんだ」とそれでわかる。事前情報でわかっていることがほとんどだろうが。

 

して、おれは「おれはオンラインRPGを全く知らないので、それに寄り過ぎている作品は見る気がしない」と書いた。異世界転生ものはわりとオンラインRPG寄りというか、ゲーム的ステータスが文字情報化されているとか、そんなんはある。冒険者ギルドとか、討伐クエストとか。でも、そのあたりはまあRPGの範疇かな、というのもある。でも、もっとオンラインRPG寄りというか、まさにオンラインRPGそのものとなると、「ああ、おれはいっさい知らんしな」ということで、そのなかのストーリーにアクセスするまえに切ってしまう。

 

ファンタジーにも限らないか。たとえば前期の『16bitセンセーション』なども、美少女ゲームと当時の秋葉原などに全くの無知だったので、どうにも視聴をつづけることができなかった。「ストーリーがよかったのに、惜しい」という話があるかもしれない。でも、どうも入りにくいな、というのはある。

 

フィクションを楽しむには、前提知識が必要とされると感じることがある。もちろん、あるていどの共通認識を受け手側に要求しなければ、説明だけで作品が終わってしまう可能性すらある。

 

そのラインをどこらへんに引くか。純文学やカルト映画など、受け手を思いっきり置き去りにしてくるやつもあって、それはそれでおもしろいが、爆発的な人気作品になったり、気軽な娯楽とはならない。え、『君たちはどう生きるか』?

 

そういえば、M-1の感想でおれはこんなことを書いた。

S-1より注目! 2023年M-1グランプリ感想 - 関内関外日記

令和ロマンがトップバッター。少女漫画のパン衝突シチュエーションネタ。たいへん面白かった。え、おもしろい。最初から面白くていいのか? と、思った。それでも94点にしてみた。ただ、一つだけ思ったのは、「日体大の集団行動」とか「新しい学校のリーダーズ」とか、おれはかろうじてわかったからいいが、知らない人には刺さらないだろうな、と。少女漫画のパン衝突はだいたいみんなわかるという前提だろうが、そのあたりどうなんだろうね。でも、万人に刺さるのはむずかしいし、それでは薄くなってしまうのかもしれない。

たとえば、こんなのもそうだ。「日体大の集団行動」、「新しい学校のリーダーズ」の首振りダンス。このあたりを全く知らなかったら、その部分のネタはないのを一緒になる。……いや、知らなくても笑えたか? そういうこともあるかもしれない。

 

ちなみに、年末の令和ロマンの単発番組で高比良くるまはこんなことを言っていた。

さて、帰るか - 関内関外日記

その番組で、やはり永野と漫才のネタの話になって、「センスのある尖った人相手にネタを作っているのか?」と聞かれて、「漫才は大衆のものだし上の世代にわかるように作っている。若者向けには単語を適当に散りばめておけばいい」というようなことを言っていて、そうかーとか思った。

 

令和ロマンは、少なくともM-1の舞台にかけるネタについてはそうしていた。ただ、ラジオとか聴くと、いきなり『とある科学』の話をしたり、映画『TOKYO TRIBE』の話したり、舐達麻とBAD HOPのビーフの話になったり、もう聴き手置き去りみたいなこともするので、本当にそのあたりは計算というかんじなのだろう。Youtubeの佐久間宣行の「100回ボケるのに何分かかる」企画でも、20歳の若い女性タレント相手に世代を探るというところもあった。もっとも、それ以上に物量がすごいのだが。

 

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というわけで、くっきー!のようにだれも知らないようなネタをひたすらやりつづけて、知らないことを前提として力技とは違うんだよな。

 

話をアニメに戻す。昨夜おれは2話にして怪作決定の『勇気爆発バーンブレイバーン』を見て非常に楽しんだわけだが、おれは「勇者ロボ」の世代ではない。喋る大型戦闘ロボとなると、小さいころみた『トランスフォーマー』のアニメに遡らないといけない。大張正己も名前とちょっとした情報しかしらない。

 

でも、『ブレイバーン』は果たして、勇者ロボの前提知識が必要なのだろうか。むろん、あったほうが楽しめるかもしれない。それでもおもしろい。とはいえ、おれにはぼんやりとした「勇者ロボ」のイメージはある。その線引きもある。ひょっとしたら令和ロマンのネタのように、「わかる人にはわかる」ネタを散りばめているのかもしれない。でも、そうじゃなくてもとりあえず楽しめる。

 

果たして『ブレイバーン』が覇権アニメになるのかどうかわからない(ならないと思う)。でも、2話にしてすでにおもしろい感じはする。とりあえず2話まででおもしろいということにする。それにしてもCygamesは『ゾンビランドサガ』にしろ、『アキバ冥土戦争』しろ、なんというか。

 

というわけで、まあとりとめのないメモ、おわり。あ、あと、おれには昔から「漫画というメディアを見たことも聞いたこともない文化圏の男性に、日本のエロ漫画を見せたら性的に興奮するのだろうか?」という深い文化人類学的な疑問があるのだが、それはまたいつか。

 

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