2025年冬のAdobe不具合祭り

 

2025年11月18日、DTP業界は阿鼻叫喚となった。……と、思う。たぶん。Adobeのアプリにいっせいに不具合が出たのだ。

 

おれは、いつものように、昼頃出社した。出社したら、おれのiMacで上司が作業していた。なにかと思ったら、朝からIllustratorの調子が悪いという。起動しても画面が真っ暗になったり、アートボードの挙動がおかしかったり、文字が入力できなかったりしたという。

 

それで、chatGPTとかに聞いたりしつつ、アプリを捨てたり、一応は安定版とされているバージョンにおとしてみたり、いろいろやってみたが、どうしてもだめで、とりあえず昼までに送らなきゃいけないデータを、そのときは動いていたおれのIllustratorで作業していたとのことだった。

 

さて、原因は思い当たらない。「ちゃんとアンインストールアプリで削除しましたか?」と聞いたら、アプリフォルダをゴミ箱に入れただけらしいので、それでもう一回きちんと消しましょう……と、やってみてもだめだった。

 

うーん?

 

ふと、おれは同じようなトラブルが起きていないか、Yahoo!リアルタイム検索(Yahoo!からXのタイムラインを検索できるやつ。べつにXで直接検索してもいいけど、なんとなく見やすいので)に「Illustrator」や「Adobe」という単語をぶち込んでみた。したら、出てくるわ出てくるわ、不具合の報告というか、悲鳴というか、阿鼻叫喚というと言いすぎだろうが、とにかく何かが全国的(世界はどうなのかはしらん)に起きている。そして、Adobe公式アカウントが不具合が起きているという報告をしている。

 

……いやはや。Adobe CC、クリエイティブ・クラウド。クラウドといっても、ふだん使っているとき、それを意識することはない。クラウドになるよ、というとき、「ネットの状況に影響を受けるんじゃないか」などと心配したものだが、そんなことなく使えていたのだ。いやはや、全国一気に影響を与えるようなエラーが起こるとは。

 

しかし、それがたとえば、みんな一斉に「まったく起動できない」というならなんとなくわからないでもないが、不具合の起き方が人によって違う、ツールがへんな挙動する、そういう細かいところはさっぱりわからん。

 

で、しばらくネットの情報を追っていたら、公式というか、半公式というか、公式の「困ったときの掲示板」みたいなやつに、Adobeの中の人が一応の対処法として、「オフラインで起動すると大丈夫な場合がある」みたいなことを書き込んで、それが一斉に広まっていた。

 

試してみた。有線を引っこ抜いて、Wi-Fiをオフにして起動。そうしたら、問題なく動く。うちの場合はこれでまあなんとかなった。ならなかった人もいるようだが、運はよかった。

 

しかしなんだろうね、もしそれでどうにもならなくて、しかもどうしても破れない入稿期日だったりしたら、どうしたらいいんだろうね。これはもう、「万策尽きた!」という状況よ。本当に困った人もいるだろうな。あと、昔、テレビのニュース見てて、なんかのスポーツで大ニュースがあって、テレビカメラがどっかのスポーツ新聞社に入ってて作業風景を映してたんだけど、「あ、スポーツ新聞もInDesign使ってるんだ」とか思った覚えもある。下手したら、新聞や雑誌とか休刊やでな。

 

……っていって、「じゃあAffinity使えばいいじゃん。無料だし」と思う人もいるかもしれない。それは、ほとんど現実的ではない。作ってきたデータがきちんと開けているのか。印刷屋がきちんと印刷できるちゃんとした印刷用データを出力できるのか。そこが無理なのだ。もしも納品しなきゃいけないデータが、Web用途の画像であれば代用できる。社内のプリンターでプリントするだけというのでも大丈夫かもしれない。そうだろうと思う。ただ、Adobe使ってるやつの、少なくない割合の人間は、印刷入稿目的だ。

 

そこだ、そこなのだ、印刷入稿というものをしなきゃいけないから、われわれはAdobeを選択せざるをえないのだ。それでも、「今どきPDF入稿なんじゃないの? AffinityだってPDF出力できるんじゃないの?」と言われるかもしれない。うーん、どうなの? いや、やっぱりそれはなんか時間に余裕があって、金のかからないものでテストしなきゃいけないし、そういう簡単なものならオーケーでも、ちょっと入り組んだりしたデータだったりしたらどうなるかわからない。IllustratorやInDesignで作ったデータを持っていってきちんと再現できるかわからない。

 

そりゃ、Adobeだってなんかトラブルが起きる可能性はある。ただ、入稿した段階でAdobeが悪さして、という原因はあまりない。問題があるとしたら、こちらのデータの作りが悪い。その信頼度がAdobe寡占の理由だ。そして、寡占はこういうときに、こういうことになる。

 

というわけで、Adobeには今回のトラブルでどれだけの人間がひどい目にあったのか自覚して、普通に使えるやつを作ってくれ。安定版を作ってくれ。さっき、入稿したあとのトラブルはあまりない、といったが、使用しているうえでのトラブルはある。だいたい、いまおれが使っているIllustratorのバージョンは29.2.1だが、これは新しいバージョンで文字関係にどうしようもないトラブルが起きたため、一応安定しているとされる古いものに戻したものだ。

 

そうだ、最近のAdobeはトラブルが多かった。

 

そして、今回の大規模災害だ。「これでAdobe離れが起きるかも?」みたいな話もあるだろうが、印刷入稿関係(印刷というと紙の本や雑誌、チラシなどを思い浮かべる人も多いだろうが、屋外サイン、看板のシートから商品のパッケージ、紙以外の素材のものも、いろいろなものがAdobeのアプリによってデザインされ、入稿されているのだ)はそうはいかない。印刷する側が対応しなくてはどうにもならない。そして、印刷機械まわりの環境を変えるのは、一つの会社がなにかするより、もっとたいへんなコストがかかるだろう。

 

しかし、Web用データを作っている人にはぜひAdobe離れをしてほしい。Adobe寡占というよくない状況に揺さぶりをかけてほしい。そう思っている。

 

追記

さっき「万策尽きた」とか書いたけど、今回のケースでは策はあったようだ。一つはWindows環境を用意すること。今回は、たまたまMacでしか起きなかったようだ。これについて、さいわいうちの会社にも、金がなくて新しいiMacが買えない状況のときに、おれの私物のWindowsノートを使って、それがそのまま会社に置いてあったから、緊急事態だとしたらどうにかできた。たぶん、大きな会社にはWindows環境も用意してあるのではないだろうか。もしもあなたの会社がどちらかの環境しかないのであれば、一台別環境を用意しておいてもいいだろう。本体だけの金でいい。モリサワも対応できる。ここはソフト買い切り時代よりは楽になった点ではある。

 

もう一つ、「CS6をインストールした昔のマシンを用意する」という手もある(そうやって今回対処していた人もいた)が、「そういえば使えるやつがあるな」という場合を除いて、そういう中古機を用意するのは面倒くさそうだ。新しいWindows/Mac機を用意するほうが簡単だろう。とはいえ、今回のようなケースでMac、Winどちらも死にました、という状況になったらこちらの方法しかない。