コンビニの端、日本酒の下限

 昨日久しぶりに日本酒を飲んだ。むろん、高い銘酒であるはずがない。コンビニで売っている、一個百円の小さな紙パックのやつだ。俺は値段に釣られて無性にあれが買いたくなることがある。そして、飲むたびに「やっぱヒデェな、これ」と思うのだ。もちろん、俺に日本酒の良し悪しが分かるはずもなく、比較対象は安い焼酎や安いスコッチ、安いワインとなるわけだけれど、やはり不味いと言わざるをえない。いや、不味いというより味が無いというか、「辛口」と書いてあるけどどこら辺が辛いのか、全くもって正体不明という印象なのだ。
 近ごろ日本酒といえば、「日本酒離れ」というフレーズで用いられることが多い。去年だったが、テレビ東京WBSでもそんな特集(http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2003/11/06/tokushu/o1.html)をしているのを覚えている。日本酒業界の人だったか、学者だったか忘れたけれど、次のような解説していた。すなわち、本格焼酎も日本酒も味の最高クラスは変わらない。それを100とした場合、焼酎の一番安くて質の悪い物でも50や60のレベルにある。ところが日本酒は10や20のものが平気で出回っている。ゆえに、「日本酒=不味い」のイメージが定着したと。もちろん、味のレベルなんてのはどう客観判断するんだ、という気もするけれど、俺はかなりその論に納得できたのである。
 ちょこっと検索してみると、安くて不味い日本酒は「三増酒」と呼ばれるものらしく、日本酒ファンにとって目の敵にされているようである。しかし、なんとなくそうなると「三増酒」が可哀想にもなってくる。だいたい、日本酒の銘柄にうるさい日本酒通などは、高い金を出して大吟醸だか純米だかわからぬが、そういったものを好きに買って飲んでおればいいじゃないか。別に日本酒全体のイメージが下がろうが売り上げが下がろうが、高級品としてのブランド価値は確立しているのだし、その小さな輪の中で嗜好を楽しめばいいだけじゃないか。何も貧乏人がやっと買えるような酒にまで文句をつけることはないんじゃないですか、と。それとも、偉大なる日本の酒文化の守護天使にして、あまねく輝き渡る知性の後光をもって、無知蒙昧と貧困のゆえに下酒である発泡酒に群がる下民を啓蒙教化しようと邁進なさる石弘光大先生のような意図でも持っているんだろうか。
 ……おっと、なにやら攻撃的だ。これも数日前の紙パック日本酒の酔いが残っているからに違いない。お酒は楽しく飲みたいものですね。