胃は背く

 俺は食べるのが早い。良くも悪くも自らの特徴に挙げられると思う。もちろん、早食い大会に出てどうこうという類の早さじゃない。日常の食生活において、だ。早食い大会をサーキットのレースだとすれば、俺は町中でやけにスピードを出している奴、ということだ。こうなった理由も思い起こせばいろいろあるが、とにかく早いのだ。「食べる」というよりは「皿の上の物を胃に移動する」という感じ。早食いは消化に悪いとか、後で空腹を感じるとか言われるけど、そこらへんもへいちゃらだ。いや、へいちゃらだったのだ、先週までは。
 どうも、先週末に高熱を出し、飯もろくに食えなくなってから胃がおかしい。昨日一昨日あたりから、普通にアクセルを踏んで飯は食えるのだが、その後が酷い。いつまでも胃に食べ物が居残ってる感じ。そんなのとっとと次の工程に回せ、と言いたくなる。それでも、胃薬を飲もうがどうしようが、胃のあたりにもやもやが残ってる。そんな感じだ。で、そのもやもやがなかなか治まらず、然るべき時間になっても空腹を感じない。
 しかし、考えようによっては、これはチャンスだ。食べ物の量を減らせば、それだけ出ていく金も少ない。今週に入ってから朝に何も食べていないけれど、ぜんぜん大丈夫だ。ゆくゆくは仙人の如く霞を食うか、極楽鳥の如く空気を食って生きようか。