イバラードの世界があった

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 モロー展の後、Bunkamuraの一回で井上直久という人の展覧会というか直売会をやっており、ちょっと入ってみた。どこかで見たことがある雰囲気かと思ったら、スタジオジブリ絡みで『耳をすませば』や『猫の恩返し』などに携わった人であった。なるほど、それらしい色づかいに統一された幻想世界だ。
 だが、俺は幻想世界より現実世界に足をすくわれがちな人間なので、値札と売約済みか否かが気になった。このサイズでこのくらいの値段か。今年の作品ばかりだな、一年で幾らくらい売れるんだろう、などなど。いや、なるほど、安すぎず、かといってプチ・ブルからグラン・ブルジョアに至る皆さまにはお買い求めやすく、ここらあたりの絵を飾ることによって、そこはかとない現代日本的なポップ・カルチャーをも内包する美術センスをアッピールできるのであろうなあ、などと思った。ヒルズ族のマダム、買いですよ、これは。
 というわけで、だんだん俺は勝手にラッセンを見ているような気分になってして、なんだかとてもうんざりしてしまった。これはもちろん茨の貧乏に生きる俺が、都会の人混みででくの坊みたいになってしまった日のことだから、井上直久氏のクオリティと何が関係あるわけ? という話だと断っておく。