菊花賞

2005年10月24日付 日刊スポーツ紙面より

ルドルフの主戦騎手だった岡部幸雄氏は以前、もし対戦したらの問いに「もちろん、ルドルフです」と即答した。…(中略)…故武田文吾師は、ルドルフの三冠を見て「シンザンを超えた」と認めた。岡部氏が即答に困るときが、きっと来る。

 俺の馬券はあらぬ方向へ行った。すなわち、ローゼンクロイツシックスセンス相手では配当が低い。馬単と考えても配当が低い。そう思ったとき、俺は高配当の悪魔に魂をとらわれた。エイシンサリヴァン
 シャドウゲイトが逃げる。しかし、外からフサイチアウステルディーエスハリアーピサノパテックと案外先団がきつめになるのではないか。三角で捲る本命はおいといて、最後はもつれて後ろから突っ込んでくるのが有利になるのではないか。そこでサドラーズウェルズの孫であるエイシンサリヴァン。無欲で最後からついてって、最後混戦の三着争いにぶっこんでくる、どうか。で、オッズを見れば大笑い。俺は五十万円の夢を見てディープ固定で、ローゼン、シックス、エイシン相手の三連複(オッズ的に三連単の買い目を増やすより得)を本線にした。その時は、このエイシン君がよもや単勝最低人気とは気づきもしなかった。
 この日は人の家で競馬を見た。関西と関東がコラボレーションする、いつもとは違う雰囲気。悪くない。なぜか俺は、レース直前に思わず数秒間数回チャンネルを変えてしまう癖があるのだが、この日はそうもいかず、じっくり輪乗りを見て、ゲートインを見た。スタート、ディープは良いスタートをきった。多くの人がこう思ったのではないか。「やばい」と。俺はもう、それを見て出遅れどころじゃないアクシデントが起きたような気になった。そして武豊が手綱を引いて三角四角一周目の直線。「おいおいおい」。……が、なんのことはない、そこから落ち着きを取り戻して、あの悪魔の捲りは見せなかったが、直線も余力あってびゅーん伸びてくるのだから言うことはなかった。
 それより、他の馬。シャドウゲイトが淀みない流れを作った。佐藤哲三はいい仕事をする。しかし、その後が俺の読みと大違いだった。アドマイヤジャパンが単独で二番手キープ。そこから離れて先団。やはり、横山典弘は勝負師だ。もちろん引っ掛かる馬をなだめて勝った武豊の騎乗も最高のものだったが、このノリの騎乗にもしびれた。アドマイヤジャパンの馬券を持ってるファンも満足できたんじゃないだろうか。俺は持っていなかったけれどね。
 そう、アドマイヤジャパンはかなり最初から選択肢から外していた。血統がどうも、という声もあったが、むしろ俺は血統に問題はないと思った。むしろ、能力に疑問符をつけていた。どうにも尻すぼみの傾向じゃないかと。けど、あれだ、弥生賞でのあの着差は大威張りだったわけだな、なんとも。
 ローゼンクロイツはあまり姿を見ることもなかった。三千がベストでもないのかな。シックスセンス複勝圏に入れず。内外タイムスの一面で前走鞍上の上村が「三千もたない」と言っていたという記述があったが、やはりベストは二千前後か。ミッドナイトベットみたいな感じか。あとはなんだ、サリヴァンは九着か。力差だろう。あと、マルカジークの「一周目から手応えがなかった」というのはどうかと思った。
 あれ、長々と自分の馬券話になってしまった。冒頭に引用したのは、えーと、まあとにかく、無敗の三冠馬ともなれば、いよいよ歴代のビッグネーム中のビッグネームと同じ世界で語られる芽が出てきたというわけだ。彼をリアルタイムで眺められる幸せと、かつての歴史に巡らせる想像。競馬はたまらんよな。
 しかし、あまり馬券が当たらないと別の意味でたまらん。テレビ静岡賞は張田京エアムートンからいったが、思わぬ先行から沈んでしまった。とはいえ、五着に入るあたりが張田の腕だ。ある意味菊花賞より勝負気味だったアクレイム。春先はジョッキーのミスが目立って未だにこのクラスと思いきや、昨日の直線を見るに馬が真っ直ぐ走ってないような。馬が競馬下手、というかなんというか、とりあえず叩かれて次走に注目したい。