幻のオリンピックチーフとミスタ・カトー

http://www.f-keiba.com/topics/2007/topics070416.html

船橋競馬場(渡辺薫厩舎)所属で昨年6月からアメリカで修行中の林幻(はやしげん)騎手(23歳)が、4月14日(現地時間)に米アーカンソー州のオークローン競馬場(Oaklawn Park)で行われたアーカンソーダービー(G2)にオリンピックチーフ(Olympik Chief)号で参戦しました。優勝は1番人気のカーリン(Curlin)で、林騎手騎乗のオリンピックチーフ(8番人気)は(9頭中)9着でした。

 このカーリンの勝ちっぷりはすごいもんで、今後トリプルクラウンも、などという話も出て当然だろう。で、英文記事に林幻騎手の話が無いかと探してみたが、無い。というか、なぜか向こうではGen Kato名義のようだ。どうも変わった漢字で書く「かとう」というのが本名なのかなんなのかわからないが、そのあたりは微妙なところで、どこも触れていないので詮索しないのがよいのだろう。
それはそうとして、オークローンのサイトのトップに次の一文があった。
http://www.oaklawn.com/

Perhaps the biggest surprise in the Arkansas Derby was the fact that Olympic Chief, the first first-time starter in the history of the race, was not the longest price in the field, that was reduced to nine by the scratch of For You Reppo (bruised foot).

 オリンピックチーフが「アーカンソーダービー最大の驚き」というのだ。でも、日本の地方騎手が乗ったとかそういう話ではないみたい。「the first first-time starter in the history of the race」って意味がわからん。最初の最初のスターター? 逃げたのはデッドリーディーラーだしな。で、ほかに漁ってて次の一文。
http://www.oaklawn.com/this-season/notes-quotes/view.asp?id=366

So exactly just who is Olympic Chief? And what is he doing in the Arkansas Derby?

 そうか、「レース史上、最初の初出走馬」って意味か! Olympic Chiefで検索すると、ブルーグラスステークスにrefuseされたなんて話(http://www.kentucky.com/304/story/42390.html)もあるし、たぶんそういうことだ。ケンタッキーダービーの前哨戦とはいえ、けっこうなビッグレースだぜ。そこに7,000ドルの未出走馬、調教師は馬主の奥さんってのが出てきたわけだ「スペシャルホースだ、モンスターだ」って言って。それに日本の林幻、おそらく日本でも知名度はかなり低い(というか俺もよう知らん)が乗って出たわけだ。これは確かにビッグサプライズだ。もしもアメリカに宝島の競馬読本みたいなのがあったら、数年後にネタにされること確実だろう。いやはや。でも、このあたりの柔軟さというか鷹揚さが日本の管理競馬にはない魅力かもしれん。なんてったって、スキーキャプテンなんかも出してもらえたしな。
 そういえば、高橋源一郎の『競馬漂流記』(id:goldhead:20051213#p2)にも「ダービーに出たい!」って一章があって、ケンタッキーダービーになぜか出てきた最弱馬たちの話が載っていたっけ。6戦6敗でそれまで勝ち馬につけられた距離あわせて84馬身半、スペクタキュラービッドの47馬身半後ろでゴールして、ウイナーズサークル目指して走ってきたカメラマンにぶつかりそうになったが、あまりにスピードが無かったので簡単に人の方が避けたとか、そんなの。って、これはアメリカの本の内容を紹介してるわけだから、やっぱり向こうでも競馬の珍エピソード好きみたいなのはあるんだろう(もちろん、大舞台にそんな馬が出るな、あるいは危ないから出るな、というのは正論だし、オリンピックチーフについてもあんまり歓迎ムードではないようだし)。ろくでなしは世界共通さね、ほんと。ああ、向こうの下らない話好きに「幻」の意味を教えたいぜ。