『ゲド戦記』/監督:宮崎吾朗

ゲド戦記 [ 岡田准一 ]
 2007年最後に見た映画(DVD)がこの『ゲド戦記』だ。この作品が話題になったのは、もっと昔のことだったかと思う。率直に言って、私は、この映画を今さら観たことに後悔している。私の、この映画を見終えたあとの、「誰かとこの映画について語りたい!」という欲求ときたらない! わかるか? 自分の中で『北京原人』と『シベリア超特急』に並んでしまった。これだけの映画は、そんなに多く存在する物ではない。ひょっとしたら、『デビルマン』はそうかもしれないが。
 とはいえ、私はアーシュラ・K・ル=グウィンの作品に『闇の左手』で触れただけだ。『ゲド戦記』の原作は知らない。しかし、しかし、『闇の左手』の出来から、アニメ映画『ゲド戦記』のストーリー破綻に結びつくものはない。もしもル=グウィンがPKD並みにムラがあるというのなら、少しは考えないでもないが。
 だが、私は根っからのお人好しなのである。いいところを探したいと思う。せっかく見た百数十分のためにも。
 やはり腐ってもジブリ映画。背景、それに音楽はよかった。手嶌葵の「テルーの唄」もひさびさに耳にしたが、やはりよい。また、手嶋はともかくとして、岡田准一菅原文太、それにクモの田中好子はすばらしかった。「もったいない!」というくらいだと思う。あと、もっとアレンが奴隸首輪で虐げられる方面で活躍(?)する場面があればよかったと思う。
 ああ、そうだ、監督のいいところも探そう。たとえば、最後のクモのキモさはなかなかキモまってたと思う。あと、アレンが切れて楳図かずおテイストの顔になるあたりもよかったと思う。アレンが鉄砲玉よろしくドスで突撃するときの、「ドスは刺すんやない! ぶつかるんや!」スピリットもよかったと思う。吾朗監督は、そのへんのキモキレドスをジブリでやる、新境地を目指してほしいと思う。こんな中身無しのお話しもどきをやるくらいなら、もっと内臓ぶちまけるようなはっちゃけっぷりをやってみなければいけないと思う。オシムのサッカーはオシムにしかできないし、宮崎駿の映画は宮崎駿しかできないはずだ。わかるか?