20円の浅知恵

 小麦は値上がりをしている。投機資金が穀物市場に流れ込んでいるとか、新興国での需要が増しているとか、原因についてはよくわからん。いずれにせよ、値上がりすれば出費はかさむ。とはいえ、主食お好み焼きで1kgの袋を買って一食100gずつ使う俺にとって、2倍くらいまでなら許容範囲というのが正直なところ。とはいえ安いものを求める心は変わらない。

 さて、スーパーに日清製粉の「密封チャック付フラワー」とニップンの「ハート」がある。前者はだいたい200円、後者は180円である。小麦粉の質に差があるのかどうかは知らん。しかし、容器の差は歴然だ。もちろん、チャック付きの方が便利に決まっている。決まっているのでおおよそ日清製粉を買ってきた俺だ。だけれども、その日、内なる理性が俺につぶやいた。「日清製粉の容器を使い回せばいいじゃない」。ナイス・ロハス! 
 が、諸君、安定しない空のビニール袋に、1kgの紙袋からさらさらと流れてはくれない小麦粉を移し替える作業をしたことがあるだろうか。まあ、あんまりうまくいかない。なんかボフッってなることうけあい。ボフッてしまって、20円分とはいわぬが、いくらかの小麦粉が失われることうけあい。ヘスス・ロハス! 精神的ダメージと後悔が軽く20円を超えるのはすぐ。それで、40円払ってもいいから、あのときの悪魔の囁きをイレイズしたいって思ったの。イレイズ&リワインド。欠如した想像力、暗闇をもがいて、光明の罠につられてもっと暗いところへ墜ちていく。俺の生活には花も心も生まれない。