以前からアニメに対して無条件のポジティブさ、なんとなくテレビのチャンネルを回していて、合わしてしまうくらうものは持っていた。子供のころ、ドラえもんが見たい、見なければならないという、その延長線だ。だけれどもしかし、思春期以降ちゃんと見たテレビアニメって? というと、『∀ガンダム』、『新世紀エヴァンゲリオン』、『天元突破グレンラガン』という三つが挙がるのみであって、アニオタはおろか、アニメ好きからもほど遠いと言わざるを得ない。が、一変するやもしらん。理由はいくつかある。
まずひとつに、テレビが変わった。これは大きい。14型ブラウン管から急に32型フルスペックでないハイビジョンに移行、単に画面を見ているだけで楽しいこのところ。自然風景やスポーツはもちろん、アニメだって見違える。今までのポジティブさがさらに増すのだ。
ついで、電波の変化。従来の民放キー局に加えて、TVK、TOKYO MX、千葉テレビ、テレビ埼玉が入るようになった。生まれてこの方、TVKすら入らぬ環境に居た身にとっては、驚きの多チャンネル化。そして、それらの局の深夜となるとアニメだらけなのである。よくわからないが、同じ作品も時間や日付をずらしてバンバン放送している。アニメ趣味などはDVDなど買うので金がかかるものと思っていたが、テレビの代金でこれだけ買えたと思えば安いか。
その、番組の洪水をどうにかできるテレビの機能、これも大きい。内蔵の番組表表示、便利なジャンル/キーワード予約、そしてボタン一つの視聴/録画予約、シリーズ連続予約……。簡単なのである。時間の制限からも大きく解放されるのである。これはアニメに限らず、テレビの限界を一つ押し広げるものだろう。やがては局が抱える全放送のアーカイブに好きなタイミングでアクセスできるようになるのではないか、ならねばならぬのではないかと思うが、それはともかくとして、今現在でも未来に向かって軽くそれができる。「VHS録画予約でも一緒ではないか?」……いや、根本では一緒だが、性能差が存在そのものの価値を変えることがあると信じる。たとえば、自動車の性能が自動車誕生直後のままであれば、社会における自動車の地位は今現実と比較にはならなかったろう。性能の、利便性の向上が、意味を変える。もちろん、もとより自動車とは関係ない世界の人間にとっては、同じ事だというのも確かだろう。ただ、俺はもとよりテレビを観る者であった。
さあ、ここまでが、アニメが俺に押し寄せる外的条件だろう。それだけで俺がアニメばかり観るか? 否、受け入れる内面があればこそ。それは何か。もとよりのアニメ志向以外に大きな要素がある。春の憂鬱の第二弾、何だかよく分からないが、現実逃避したい、人生から降りたいという、その心持ちである。もちろん、アニメ好きが皆そのような動機でアニメを観ているとは言わない。しかし、少なくとも、俺が俺について考えると、その心情が大きい。あるいは、昔から大きかったのかもしれない。実は、小さなころからそうだったかもしれない。漫画も、ゲームもだ。
……読書、小説をはじめ、本を読むことはちょっと違う。どこが違うかよくわからないが、とくに読書は違う。浸って、気軽な気持ちになろうと本は読めない。読む気力が起こらない。本に対しては、どこか立ち向かうところがある、身構えるところがある。結果的に、浸って、安楽な世界を享受しようとも、入口が違う。何が違うかは説明しがたい。読書については、「その本を読みたい」というチャンスをうまく掴まないと始まらない。だから、買っても読まぬままの本が溜まる一方だ。そして、気力を失ったときは、たとえば今は無理だ。だから、アニメを選ぶぜ。
というわけで、ここ一週間の深夜の俺はアニメだらけだ。これは、このまま行ったらアニオタになれるんじゃないのか、というくらいだ。まあ、おそらく道は険しい。まだ家から出て門の方へ五歩くらい歩いたていどのものだろう。しかし、過去十年に三本の人間が、『RD 潜脳調査室』のついでに『秘密』と『ドルアーガの塔』を観て、もう時系列はわからないが、『XXXHOLiC』に『隠の王』に、『紅 kurenai』に、『純情ロマンチカ』まで観たら……。
……なんだ『純情ロマンチカ』、たまげたなぁ。男同士だとここまで許されるんか? それとも、深夜だとこのくらいのエロありなんか? Nice Boat.(ネットで得ただけの知識)ってならへんのか? しかし、このジャンルのものがアニメに、放送されるアニメになっているとは知らなかったなあ。市民権を得た、というところなのだろうか。
ちなみに、このジャンルについては、CMで一瞬映った雑誌の表紙、こうじまなんとかとか、CJなんとかの名に見覚えがあるくらいの知識はある!……と、無駄に力強く宣言。しかし、とんとご無沙汰だ。漫画自体読まなくなって久しい。それと、ここ最近では『アカイイト』の影響もあって、これからは百合でしょ、百合ってことで、何冊か漫画買ってフハッってなってるんだけど、結局どちらにもフハッてなって、かといって、ボーイミーツガール的なストレートなものは眩しすぎて見られず、男女となると人妻主義、寝取られ志向が強いという俺の内面そして遍歴、それはまたいずれ整理したい。
あ、そういうわけで、アニメ見ていこうかと思っています。
関連______________________
- 「REGZA 32HR3000を買う」……上記いくつかの条件には、この機種自体に負うところが大きい。いや、ほかのテレビや録画装置群の機能のことは知らないが。
- 「我、テレビを再発見す」……自分に関しては、アパートのケーブル化という、直接的な身銭と手間を食わぬお膳立てがあったからデジタル化できた。そうでなければ、ハードルは高いし、見合う対価かはわからん。
- 『RD 潜脳調査室』第2話……これはアニメ病に侵されていなくてもSF方面から見たであろう。
- 『完本妖星伝』……今、読書に向かう気力がないのは、このクソ分厚い大作に魂を持ち去られたせいかもしれない。
- 『アカイイト』……突発的にギャルゲーやりたくなっただけとはいえ、これのフラグを立てたのはなかなかの影響と実感。