僕の手は子供の手

 寒くなってきたので手袋をしようとしたら、なぜか右手しか出てこない。手袋のために、羅刹のように左手を切り落とすわけにもいかないので、手袋の方を新しく買うことにした。
 「無印良品」あたりで買えば上等だろう。そこで見つけたのが「ラムウール混ミトンカバー」。手袋の何が嫌だといえば、ちょっと財布から金を出すのにも、いちいち外したりしなければいけないということ。考えてみれば、このような工夫のものにすれば問題ない。自転車でも、ミトン状態で大丈夫だろう。
 と、ためしに試着して僕は凍りついた。連れの人はケタケタ笑った。僕の指が短すぎて、穴から抜けてこない。「小指を無くされた方ですか? 仁義か何かで」といったあんばいだ。他の指も、わずかに亀頭が露出したシャイボーイという具合である。なんということだ。何かの間違いだ……。
 というわけで、婦人用を買いました。考えてみれば、ずっとずっと手袋の指先が余っていたように思う。その余りは無駄だった。婦人用を買えばよかったのだ。それで、いっそのこと可愛い柄の入った白いのを買おうとしたくらいだ。ただ、それはさすがにきつかった。でも、これはしっくりくる。ざまあ見ろ。
 それで、この手袋の利点というのは、親指も抜けることだ。親指カバーを外して親指を露出すれば、親指でケータイが操作できる、メールも打てる、馬券も買える。これはすばらしい。すばらしいすばらしい僕の手袋、すばらしい僕の指。短くたって、いろいろいやらしいことくらいはできる。