『パイレーツ・オブ・カリビアン』の最新作を観てきた。みなとみらいのブルク13、3D字幕版。封切り直後らしいが、客の入りは、前列と両サイドがほとんどスカスカだった。
感想から書けば、「やっぱりおもしれえな」だ。シャッポを脱ぐ、といっていい。
この世界にはいろいろの表現があって、なにが一番ということはないだろうが、映画がいいろいろの表現の中でも主要な形態のうちの一つといえることはあるだろうし、映画の製作費用が作品内容と比例するわけでもないだろうが、その費用が大きいだけ才能のある人間、技術のある人間、最新鋭の機材が集められたとみていいだろう。スタッフ・ロールの「Security for Mr.Depp」の人など、おそらくは元スペツナズかなにかで、電脳ハックやインセプションにも対応できるに違いない。そういう意味でいって、『パイレーツ・オブ・カリビアン』最新作が地球を代表するプロダクトといって決して間違いではないように思える。「マクドナルドのハンバーガーは世界で一番売れているんだから、世界で一番うまいに決まってる」ではないが、そういう説得力はある。俺はそう思った。
たとえば、冒頭のロンドンの街のシーンなどが好きだ。俺はその時代のロンドンのことも知らないし、ほかの映画でどう再現されているかもしらんが、えらくすばらしいように思えた。舗装されていない道なのだけれども、少し湿っている。その湿りぐあいがいい。そこを湿らすあたりに、やはり世界最高峰か、という気がするのだ。
言うまでもないが、ジョニー・デップのジャック・スパロウはいい。
映画を見た幹部たちはスパロウのキャラクターをみて「あのキャラはなんなんだ」と「許せなかった」という。ある女性幹部はスパロウがゲイなのかどうかを聞いてきて、デップは「僕が演じるキャラクターはすべてゲイなのをご存知なかったですか」と答えると、ぴりぴりとしていたという。
ジョニー・デップ 「キャプテン・スパロウはゲイ」「アンジーは信じられないほどノーマル」とぶっちゃける - ABC(アメリカン・バカコメディ)振興会
この調子である。不遜にして不羈でありながら、なんかクネクネしているのがいい。クネクネ歩くジャック・スパロウの動きは、リング上の太陽ケアの動きくらい好きだ。ハリウッドのメジャー映画、ディズニー作品のなんらかのコードを決して逸脱しないようにできているであろうことは信じるが、一方で彼から醸しだされる自由さというのは大きな魅力である。海賊のアナーキーがある。
また、重要な役であるところのキャプテン・バルボッサや黒ひげもいい。普段、かわいい女の子ばかり出てくるアニメばかり観ているような人間にとって、このおっさん濃度は悪くない。
ただしかし、3D(風立体視)はどうなんだろうか。べつに必要ないんじゃないのかという気はした。観ているあいだは、もうそれに浸っているのでそれが当たり前というふうだが、なしならなしで問題ないというか、あの重いメガネが視力矯正用のメガネにのしかかり鼻がいたくなるのはむしろ問題だろうという気もするのだ。
さらにいえば、あのメガネはなんであんなに汚れているんだ? 3Dで画面からなんかぶっかけられたのかという有り様じゃないか。わざわざベタベタ指でこする人間もいないだろうに、まったく解せない。今回、俺は、持ち歩いていたカメラのレンズ用クリーニングペーパーとクリーニング液でピカピカにしたからいいものの、ただのメガネ用レンズ拭きでは対応できない。
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こんな苦労を観客に課すものがまかり通っていっていいのかといえる。だいたい、メガネをかけて立体風に見えますって、どこの昭和か。こんなものが世界最高のプロダクトとか言ったやつ出てこい! ここにいるぞ! ドカッ!
というわけで、話はわりかし一本調子で「だんだん寅さんシリーズみてえになっていくのか?」というような気がしたりもしつつ、そんでもまあ、一年に一度このレベルのものが観られれば満足だろうというような気もしつつ、なんでスペイン人はあれを磨いていたんだろう? とか、かといってまあ、いや、しかし、などとなんとなくテンション下がりつつも、夜家に帰ってテレビで『パイレーツ・オブ・カリビアン』第一作が流れていたのをしっかり見てしまうあたり、やっぱり何かしらパワーがあるんだぜと思ったです。デッデッデレ、デッデッデレ、デッデッデレレー。あ、はっきり言って3D版で観ない方がいいのではないか? おしまい。
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