SR夢の終着駅、あるいは落日の空港


 気づいてみればまた電車の写真を撮る。ローカル線に乗る。電車が好きなのかと問われれば、嫌いではないと答える。本当に好きなのかと問われれば、答えに窮する。

 (><;)イマサラシュミニスルニハフカスギル……。

 さあ、東から西へ、次の目的地へ。次の目的地……、N国際空港である。霧の中から現れるヘルメットの男たち、手にはゲバ棒、旗に「反米愛国」。昭和の残光。いや、そんなものを夢見ることはあるまい。ただ、俺は空港からあれに乗って旅をするだけだ。

 俺にとっての空港といえば首都圏湾岸埋め立て地のそれである。俺は生涯に二度だけ飛行機搭乗者として、そして幾度か見学者としてそこを訪れた。それ以外の大きな空港というのはどういうものか思いつかない。この単線、田んぼと山の先に空港があるとは信じられない。しかし、そこに空港がなくてはならないし、俺は旅立たなければならない。

 N市N駅に着くと雰囲気が急に変わる。首都圏のはずれの方の駅の雰囲気がある。さらにそこから乗り換えて空港を目指す。

 N国際空港。

 警戒感、そして閑散。

 世界に飛び立つ人が少ないのか。世界から飛んでくる人が少ないのか。

 地元の特産野菜だって売っているのに。

 いや、もとより俺は空港自体に用などないのだ。単なる経由地に過ぎない。

 搭乗口に向かってバスは走る。

 俺の目的地、俺の搭乗口。

 SR。日本一線路の短い鉄道、たった二駅の間を行き来する鉄道、これである。

 はにわもお出迎えしてくれるのだ。

 ああ、SR、wikipedia:芝山鉄道、いわくありそうなその存在。

 この鉄道の運転士は、死ぬまで二駅の間を行き来する。その二駅の距離は空港の滑走路の半分しかない。

 慄然とする。

 世の中には飛行機もあるじゃないか。

 空を飛べるのだ。

 滑走路の半分しか飛べない飛行機はない。

 ヘリコプターだってある。

 それなのに。

 君はなぜ、すべての時間を狭い運転席で過ごし、二つの駅を銀河系の終焉まで往復しつづけるのか?

 (じっさいにそんなことはないのだろうが)

 そして、警察官を乗せた電車はN国際空港に立ち戻る。

 国際空港が誇る駅。

 まったくの無人

 監視されてはいるのだろうけれども。

 これがこの国の玄関口なのか?

 (わかっていて言ってるのだし、読んでいるおまえも知っている前提なのだが)

 ただ、ウサマ・ビンラディンが殺されたことを知ったのは、帰りの高速バスの中であった。
 だからなんだというのか。
 それでもSRは往復しつづけるのだ。
 (しないわけだが)

〜おしまい〜

関連してない

これで撮った
[rakuten:masanios:10082759:image:small] Sonyα550
[rakuten:mitsuba:10004974:image:small] SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC
[rakuten:mapcamera:10239314:image:small] TOKINA AT-X 116 PRO DX 11-16mm F2.8