- 作者: 渡辺京二
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1985/04
- メディア: 単行本
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「序章」のp.9に、エンピツで控え目な誤字の訂正が2箇所入っていたのである。
天草が辺境だというのは、それが古来、人や物貨や分化の表通り、つまりそれらが往来する大動脈から遠く離れているということである。
この「物貨」を「物資」に。
佐渡の金毘羅信仰はこの讃岐船によって将来されたものという。
このの「将来」を「招来」に。
……「物貨」はいいんじゃねえの? と思ったが、まあ細かく赤を入れたい人なんだろう。でも、図書館の本に書きこむやつは死ね。
と、思いきや、念のための検索とは欠かせないものだ。
2 引き連れてくること。特に、外国など他の土地から持ってくること。「中国から―した書物」
将来(ショウライ)とは - コトバンク
なんだよ、「将来」でもいいじゃん。
で、不安になって「物貨」も引いてみたらごらんの有様だよ。
〔名〕品物。
「物貨」の検索結果 - Yahoo!辞書
いや、字面通りに「物とか貨幣」と適当に思っておりました。
んでさー、こんなのもひっかかる。
wikipedia:船中八策
一、金銀物貨宜シク外国ト平均ノ法ヲ設クベキ事。
てーと、これはえーと、たぶん幕末に不平等な形で海外に金が流れたりしたことに対するあれなんだろうけれども、なんか貿易品についてのなんかだろう。こちらは「物価」のニュアンスなのかしらん。
でも、まあ天草を素通りしたのは「品物」だろう。むろん、「物資」でもいいんだろうが……。
あー、なんというか、俺がほんとうにメモしておきたかったのはこっちなんだ。
「貴君の筆は鋭利なり」とか「我党の気焔君によりて万丈」とかは、彼自身が囲りからいわれたことであろう。
この「囲り」を「周り」に。
これだ。こっちの話だ。「囲」を訓読みするときは「かこう」だの「かこみ」だのだろう。
ただ、「囲う」と書かれてわからんわかけでもない。おおよその人は「まわり」と読むだろうし、意味も了解するだろう。スッと読んでしまうだろう。そこんところの話だ。
……とか言いつつ、まあこんなの(http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%BE%E3%82%8F%E3%82%8A&dtype=0&dname=0na&stype=0&pagenum=1&index=13153700)が検索で引っかかってしまうのだけれども、まあそれは置いておく。つーか、検索すればいくらでも用例が出てくるし、わりとそう使われていたようだし……でも、それも置いておくもん。もういいもん!
で、なにが言いたいかというと、たぶんこの本は時期的(初出1978年)にも、手書きされたもんだろうということだ。それならば「囲り」が出る。ただ、これが現代、パソコン使って、なんらかの日本語IME経由で物を打つ場合、おそらく出てこない。「彼自身が周りから」と変換されるだろうし、それで合っているからだ。「囲り」の方がしっくりくるな、という発想が出ない。そういうふうに筆を滑らすことができない。
ここのところから二つのことを思わずにはおられない。一つには日本語が漢字とやまとことばによる二重の言語であるということ。漢字とひらがながあるということからくるある種の曖昧さ、あるいは表現の広がり。そこんところに、わりと、自由と寛容、それほど固定しすぎないところを持っていると、わりあいいいんじゃねえのかという気はするのだが(もっとも、読みかけの本書によると、北君が『国体論〜』に一般人のとっつきにくい漢文書き下し風文体を選んだのは、論理的な欧文のシンタックスに近づけようとした云々と出てくるのだが、まあそういうこともできるよ、という話で)。
もう一つには、人間の思考、表現は道具によって左右されるということ。木簡に書くのと、紙に書くのではなにかが違ったろうし、筆とペンでも違ってきたろう。あるいは、原稿用紙という存在もなにかを左右しただろうし、ワードプロセッサーはなおのことであろう。そこんところはなんかおもしろいし、こわいし、頭のどっかに置いておきたいように思う。というか俺自身、会社のMacで長年使ってきたATOK使ってるときと、Google日本語使ってる今この時と、どれだけの違いがあるのか、などと。
……とか言う前に、俺ぜんぜん単語の意味から知らなかったじゃん。言語だの思考だの以前じゃねえか。なんかもう、得意げにこの本に勝手に書き込みしたどこかのアホと同じということに愕然として、なんかもう、言葉なんて覚えるんじゃなかったという気にもなっているし、正直言って学がないなーというところに行き着かざるをえない。まったく。あとは勝手に下の本でも読んでください。
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おしまい。