SUEDE Japan Tour 2013/SHIBUYA-AX/10.11


 十月十一日はスノウブラインド言うにはまだまだ暑い夜やった。わいは何ヶ月もまえに買ったチケット握りしめて東京も東京、渋谷にライブに行ったった。東京は怖いところやが。そやけどスウェードの単独ジャパン・ツアー、十年ぶりやった、なんぞ言うも、わいは二十年近くファンやっとって、ひと目もスウェード見たことないのやった。ひとりでCD買うて聴いてただけやった。
 そしてわいは、ひとり、夜、CDウォークマンでトゥ・ザ・バーズを聴いとった。そんな中学生やった。空想の中のヨーロッパはわいのプレイグラウンドやったろうか、違ったやろうか。夜のヌレイエフのように、わいはスウェードのシングルを買うた、アルバムを買うた、やがて何も出んようになってしもうた。ええ具合に再起しとるとか、そういう様子は横目インターネットで伺ってはいたんやけれど。
 それで無人のステージに青いライト、スモークの量が増えて拍手が起こって、それでも出てけえへん。と、思ったら暗転、なぞの荘厳さを備えてわいの、わいらのスウェードがバリアーズの向こうから出てきたのやった。
 会場にはヤングメンもモダンボーイズもおった。ジャンブル・セール・マムズもセイディもおった。皆がフィルムスターのブレット兄貴がジーザスみたいに閃光の中に立つのを見とった。兄貴はあっという間に汗だくになりよった。
 ブレットの兄貴、まるでキリング・オブ・フラッシュボーイ動きやった。小さな蜘蛛が真横に飛ぶみたいにブレット兄貴動いとった。すごいスピードやった。わいはこれがセイム・オールド・ショウか思うた。いつまでも兄貴のスピード衰えず飛び跳ねとった。スタートからエンドまでそうやった。
 ディス・タイムや、これはビッグ・タイムや。わいはそう思うた。驚くべきムーブ。バンド・メンバー紹介すらないノン・ストップ。マイク鎖鎌もいつもより長く回しておりますいう。いわんか。リチャード・オークスは鎖鎌を避けるためにあんなに端っこにおったんか?
 いずれにせよ、メタルミッキーにサボタージュは許されへん。心も肉も許されへん。あれはアニマルやったのやし、わいがトゥウェンティ・ワンやったのは昔の話や。ポピュラー・チューンがどんなんかわいは知らん。
 それでもわいは歌った。兄貴がシンギン! 言うし、言われんでも、全部の曲だいたい頭のなかに入っとった。わいは動いた、手を伸ばした、よう歌った、拍手した。わいはニュー・ジェネレーションやないけれども。わいはピルズを見つけたんかもしらんかった。そしてマイセルフを失のうていた。インディアから、それともアルヘンティーナから来た少女も失のうていた。瞳に映るはキャント・ゲット・イナフ!
 アンコール、ボディにワンヒット、ソウルにワンヒット、カモン、そしてヒットミー、ユア・マジェスティ、三打数三安打のブラッド・スポーツ言うが。それでも、すべての物は流転していくんやで。
 そう、それでもわいも兄貴もみなもソー・ヤングやから、ソー・ヤングやから、まだドラゴンを追い続けることができるんや。もう兄貴も「タイキング・アウヴァー」いわんと「テイキング・オーヴァー」歌っとったけど、わいはそう思うた。わいも兄貴もトラッシュで、ソー・ヤングで、ドラムマシーンのためのサイコやから……!
 ハイ・オン・ディーゼル帰りのことやった。安い洋食屋で味気ないカツレツ食いながら女が言うにはオープニングのオールウェイズお気に入り言うことやった。掃除のときに聴くリストに入ってる言うことやった。わいにはようわからんかった。ちなみに今日のセトリなんぞは余所あたってくれんかいの。
 そして、わいは遠くなった耳で女の言うことききながら、頭ん中でドラゴンをチェイスすること考えとった。ヘッド・ミュージック。わいはトラッシュやし、ファイアラインの豚やった。ずっと昔からトラッシュやったし、フォルトラインの豚やった。豚は空を飛べるのやろか。そして、ドラゴンを追いかけられるんやろか……。

関連>゜))彡>゜))彡>゜))彡