ひどく不安そうな少年

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おれが電車の座席に座っていると、目の前にひどく不安そうな少年が立った。小学校の三年生か四年生、あるいは五年生か六年生かもしれない。つり革に垂れ下がっているような力のなさで、表情はなにかに怯えているようだった。ひどく疲弊しているようだったし、どこかとてつもなく嫌なところに行く途中のように見えた。

少年よ、君がどこに行くのか知らないが、その不安は長い人生から見れば一瞬で終わる、なんら大したことじゃないんだ。たぶん、君にはわからない。その嫌なことが人生の全てに思えるのだろう。ぼくにはよくわかる。でも、君に言ったところでわかってもらえるとは思えない。

でも少年よ、君が今から行くところは大した問題じゃないんだ。そんなに不安そうになることはない。言ってもわからないだろうけれども、ぼくはそう言いたいのだ。

そして、その小さな問題が終わったところで、人生には次から次へと嫌な問題が出てきては、君をとても嫌な気分にさせる。君はもう、一生嫌な気分の連続の中で生きるしかないんだ。いやな問題が次から次へと出てきて、人生は最悪だ。いいことなんていうのはめったにある話じゃないし、なにかよかったと一息ついたら次には不安でうんざりするような現実に直面しなくちゃいけない。

そんな人生は人並みの幸福を近づかせない。君はやがて生きるすべを失うだろう。不安がそうさせる、嫌な気分がそうさせる。進路は閉ざされ、職は失われ、とても嫌な気分になる。今、君が電車の中でうんざりしているようなことが連続して訪れ、しまいにはとてもとても嫌なことになる。

少年よ、君がどこへ行くのか知らないが、そんな不安はその不安は長い人生から見れば一瞬で終わる、なんら大したことじゃないんだ。ただ、それは再び現れ、三度現れ、君の人生を台無しにしてしまう。

君はおそらく天寿をまっとうできない。自分の手で自分の人生を終わらせることになるだろう。君の人生の幸福というものがすでに失われてしまっているのをぼくは見てしまったし、もうそうなるよりほかないのだ。残念だけれど、そういうものなんだ。