信号待ち。となりのおっさんが携帯でだれかと喋ってる。大きめの声なので、自然と聴こえてくる。そのなかでこんなフレーズが耳に入った。
「五千円も出せば一生もの買えるやん」
五千円で、一生もの? それはなんだ? 話してるおっさんの風体もわからない。いったい何の話なのだろう。そして、五千円で買える一生ものとはなんだろう。おれの頭の中は、五千円の一生ものでいっぱいになった。
衣食住から考えてみる。五千円で一生ものの服、というのはあまり考えられない。食は一生もたない。住で五千万円はあっても五千円はないだろう。
そのほかのなにか。なぜかおれの頭に浮かんだのは、自転車の空気入れだった。
パナレーサー 空気入れ 楽々ポンプ エアゲージ付 米式/英式/仏式バルブ対応 ブラック BFP-PGAB1-LH
- 出版社/メーカー: Panaracer(パナレーサー)
- メディア: スポーツ用品
- この商品を含むブログを見る
しかし、一生もの。おっさんになってからの一生ものだろうから八十年とはいわないが、五十年くらいもつものであろう。空気入れにそれだけの耐久性があるのか、確信はもてない。もちろん、五千円の自転車ということはありえないだろう。
一生もの。あまりメンテナンスを必要としないものだろうか。文房具あたりではどうだろうか。万年筆? よくしらないが、それだと五千円では足りないだろう。かといって、五千円で一生使うステープラーというのも想像しにくい。シャープペンシルあたりなら考えられなくもないが(おれは学生時代ずっとステッドラーの三つのサイズに対応したシャープペンシルを使っていて、そのくらいの値段がしたはずだ)、文房具だろうか? という気もする。
そこで思いついたのが工具だ。たとえばおれはHOZANのペダルレンチを愛してやまないが、こいつなら五十年もちそうな感じがする。いや、毎日使っていたらなめてくる可能性はあるが、工具、そのあたり。できるだけ単純な工具。五千円のレンチなどであれば、一生ものだろうか(トルクレンチなんかは除く)。なんとなく大工さんが五十年使う、とかいう工具はありそうだ。墨つぼとか? いや、墨つぼもなにかデジタル化されているようだ。ノコギリとかは消耗しそうだし、なにか木槌とかそのあたりだろうか。
このくらい単純なもので、五千円というそこそこのお金(足元を照らすのに火をつけるにはもったいない額)となると、ありえるのではないか。そう思うに至った。
とはいえ、世はものに溢れている。五千円で一生ものというものも、おれの想像の及ばないところで存在しているに違いない。あなたなら五千円で一生もの、なにを思い浮かべるだろうか?