栃ノ心について

関係者各位

寒気ことのほか厳しく、葉物野菜の値も下がらぬ寒冷のみぎり、如何お過ごしでしょうか?

BBM2016大相撲カード■レギュラーカード■No.10栃ノ心 剛/小結

栃ノ心が勝っている。優勝しそうな勢いだ。

正攻法で賜杯引き寄せる=栃ノ心、初優勝に王手-大相撲初場所 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 力自慢とはいえ、215キロの巨体と胸を合わせれば勝手が悪い。それでも小細工なしで、ともに得意の右四つがっぷりでの勝負を挑んだ。相手の上手が切れたところで、すかさずまわしを引き付けて前へ。「自分の相撲を取れてよかった」。勝機を逃さない攻めだった。

 右膝の大けがをし、前に出る意識をさらに強くしたことで、正攻法の取り口に磨きがかかった。土俵下の藤島審判長(元大関武双山)は「逸ノ城とがっぷりで寄り切るのは栃ノ心くらい。横綱大関でもなかなかない。それくらい力強い」と、地力を認める。

おれは土曜日や日曜日、おおよそ競馬に負けるとチャンネルを大相撲中継にかえて、ボケーッと見て過ごす。好角家とは程遠い。それでも、贔屓の力士というものが出てくる。それが栃ノ心だ。

おれには相撲の詳しいことはわからぬ。だから、以下に記すことについて、相撲ファンは黙殺してほしい。べつに罵詈雑言を投げつけてもかまわないけれど。

おれは栃ノ心の「怪力」と「相撲下手」が好きなのだ。御嶽海のようないかにも重い力士すらリフトアップしてしまう。腕力(かいなじから)でいったら、現役力士で栃ノ心が最強なのではないかとすら思う。

が、それでいて大相撲の最強ではない。なにやら、大きな相手を(栃ノ心だって大きいのだけれど)を持ち上げてしまって、さあどうしよう? とかいっている間に負けてしまうことがあるのだ。

そこがいい。

土俵際、リフトアップしてしまって、そこから相手を放り出すことができない、そんなことがある。先に書いたように、おれは競馬に負けた放心状態で見ているから、何年の何場所の何相手に負けた時のことだ、などということはわからない。だが、栃ノ心にはそういうイメージがある。相手を持ち上げてしまって、さて、そこから決められない。

その、怪力を持て余しているように感じられる、そこがいいのだ。とにかく持ち上げる。でも、そっから先、どうもなんか苦手くさい、そういう感じがする。その不器用さがいい。

とはいえ、栃ノ心は単なる怪力の持ち主ではない、らしい。

栃ノ心剛 - Wikipedia

相撲を始める前は柔道とサンボを経験し、サンボではヨーロッパ王者になったこともある[3]。小学生に入るころに柔道とチオダバ[4]と呼ばれるジョージアの伝統格闘技を始めた。

柔道やサンボやチオダバ(なんだそれは?)の使い手なのである。技の人なのである。とはいえ、相手を寝技に引き込んで関節技にいこうとしたら、スモーでは負けなのである。いや、柔道もサンボも投技の世界だろう。それにしたって、なにか栃ノ心は不器用に思える。ひょっとしたら、柔道やサンボやチオダバ(なんだそれは?)の戦いでも、腕力頼みでやってきたのかもしれない。でも、そこがいい。

というわけで、おれは今場所、栃ノ心が優勝してくれたいいな、と思う。怪力、剛力、それが土俵の上で花開く。柔よく剛を制すではない、剛が剛で突き進んで地の果てまで相手を吊ったまま進んでいく。たまにはそんなことがあったって、いいじゃないか、なあ。

平成三十年度 大相撲 力士名鑑