『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』フィリップ・K・ディック

goldhead2004-09-29

 二日連続でキックが必要なほど現実逃避したかった。そこでディックを慌てて購入。夜帰宅後に飯も食べないで読みきってしまった。
 これも長編ながらしっかり収めてる作品。二日連続だと、こちらの脳も悲鳴を上げそうな感じだ。ディックならではの現実/非現実みたいなあれは非常にくるものがある。先に読んだ『ユービック』の、死に至る階段の描写も凄まじいが、こちらのくり返す悪夢も強烈だ。
 もう一つ強烈なのが、女に対する喪失感や後悔、そういったもの。自分は寝取られ好きの人間だけど、ディックのは寝取られとはちょっと違う。ただ、その孤独や疎外感には相通じる物があると思う。ここら辺は、ディックの人生そのものと関わる部分でもあるらしいけど、今は特に知りたいとは思えない。あと、火星植民地におけるフリーセックス気味の社会ってのはひかれる物がある。あるいは、閉じた空間(社会)でのそういうのが気になるのだ。ちょっと前に南極越冬隊の不倫騒動があったhttp://biz.nifty.com/news/nk/page.jsp?file=20040223_5&no=0が、これも凄く好きな話だった。なんだろう、自分には観淫症の要素でもあるんだろうか?
 長くなってしまったが、上の段落は話が逸れすぎた。本作の力はそこではなく、あくまでディック的世界。次は『ヴァリス』でも読もうか。
 あ、そうだ、原題が「THE THREE STIGMA OF PALMER ELDRITCH」で、なんで「stigma」に複数形の「s」が付かないのか不思議だった。辞書をひくと、キリスト教におけるstigmaは、複数形「stigmata」とある。ん?あ、原題を思い違いしてた。「THE THREE STIGMATA OF〜」だったのね。複数形がそういう英単語って他になんかあったかな。