映画『真夜中の弥次さん喜多さん』

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 ついに、ようやく、やっとこさ見ることができましたこの作品。私としては宮藤官九郎長瀬智也というだけで満足な組み合わせなのですが、ほかにもクドカンものでおなじみのメンバーも勢揃いで、これはもう最高の一作でしょう。
 ……というような気持ちでDVDを見始めたわけです。そうです、最高とは言えなかった。結論から言えば、‘テンよし・中よし・終いタレ’といったところでしたか。とにかく、江戸と江戸から旅立つスタートは最高で、東海道を一気に突っ走るハーレーにはしびれたものです。それを呼び止める警官が寺島進なのですから、いや、豪華豪華なわけです。
 その後もテンポ良く笑いを差し挟み、しりあがり寿の原作(もいくらかは持っていました)の空気とクドカンのテイストがマッチして、それはもうたのしかったわけです。ただ、最後の直線でたれてしまった。正直、「ちょっと長いかな」と思わざるを得なかった。『タイガー&ドラゴン』なんぞは、「もうちょっと続いてくれ」という感じだったのですが、こちらはその逆というところです。切れ味よくスパッと来てほしかった。思うに、『マルホランド・ドライブ』的映画館シーンから、最後の夢幻世界へ入るのが少し遅かった。前半詰め込みすぎたのではないかと、そんな風に思います。それで、せっかくの荒川良々たちも、やや疲れた目で見てしまったというわけです。ここらあたり、映画初脚本初監督なので仕方ないかもしれません。
 とはいえ、個々のパートで個々の役者はとてもよかったように思えます。なんといっても長瀬君は、もうなんというか、ジャニーズがそこまでやるのかという弾けっぷりでしたし、相方の中村七之助もさすがの(?)ジャンキーぶり。この二人の主演にはけちつけられない。それに、わずかな出演ながら古田新太は存在感があったし、上方お笑い役の板尾創路もよかった。やや追っ手の阿部サダヲのキャラがいまいちと思えたのは、ハードルが高いのでしょうか。
 ああ、後忘れてはいけないのは中村勘九郎(いまは勘三郎だが、このときはまだ九だったか。http://www.mypixel.co.jp/kabuki/nakamura/kankuro.htmlちゃんとプロフィールにも載ってるな。どうでもいいが、ファイル名はkankuroのままで、襲名はしないようだ)。もとからバラエティ番組に出たりするタイプの人とは思っていましたが、あなた、「夜でもアーサー」とはよくやったもの。よくぞ息子の前で、などとも思いました。いやはや、歌舞伎役者は奥が深くて侮れない。落語の次は歌舞伎か? とか思ったりしたものです。
 というわけで、全体の構成にややけちをつけたくはなるが、個々のネタと演技には大満足。そんな映画という風に受け取りました。もちろん、二作目、三作目と今後の宮藤官九郎監督にも期待していきたいところです。