『鎌田俊彦氏の生活と意見』鎌田俊彦

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 ちなみに刑務所の役割は何かというと、このあたりはサヨクもよく分かっていないようですが、決して犯罪者を改心、改悛、更生させる場所ではありません。これは誤解もいいとこで、単に犯罪者の自由を奪い、隔離することで、結果的に社会の治安を守っているだけなのです。それ以外の何物でもありません。

 古本屋の百円コーナー、別の掘り出しものがあって、せっかくなので「四冊百円」の恩恵にあずかろうと、なんとなく手に取った本。表紙写真は荒木経惟だし、装幀は菊池信義なのでお得感十分。俺はもとより獄中記が好きだし、祖母の兄が連続爆弾テロで記憶喪失になったという話を聞いてきたので、そこらあたり爆弾魔の話を読むのもおもしろいのかと思ったのだ。そう、著者は‘クリスマス・ツリー爆弾’とやらで無期懲役を食らった現役の囚人だ。
 しかし、なんのことはない、俺の求めた「獄中」生活の話は少なく、ほとんどが意見。しかもそれは、特に新左翼だかなんだかとか、過去を振り返るそんな話題は多いが、そればかりというわけでもなく、社会時評、読書の話、映画の話、テレビの話、トリビア的うんちくなどなど、まさにブログそのものの内容で、読後感もそんな感じ。筆の運びも軽く、なんだかもう、楽しそうやね、などと言いたくなる。あるいは、いつも文末(この本は手紙をそのまま用いている)に、本を送ってくれと高いハードカバーを定価つきでずらずら連ねて、そこらあたりに対する嫉妬もある俺か。
 というわけで、いくらか面白い意見やうんちくもあったり、そりゃもちろん、刑務所の中に関する話もそれなりだったが、まあ、なんというか、特殊なひこきこもり氏の意見という風で、しかしまあ、これはこれかという印象であった。