僕の住んでいるアパートはだいたい一列に三棟あるのが二列半くらいあって、だいたい計算してみたところ六十四部屋以上はあるんじゃないかと思う。一つ一つの棟はそこらへんのワンルーム・アパートだけれども、これが山の斜面、大階段の両側に段々と建っていると、九龍城的変態感がある。このアパートから洗濯物が飛んできたという隣の敷地の一軒家のご婦人から、面と向かって「気味の悪いアパートね」と言われたことがあるくらいだ。住んでる人に面と向かって言う言葉じゃないよね。
僕の部屋の向かいの棟の三部屋の外置き洗濯機が無くなっていることに気づいたのはここ数日のことだ。外置き洗濯機が無くなるということは、その部屋が空き部屋だと見なしていいことだ。僕は引っ越してからしばらく、洗濯機無しの生活をしていたのだけれども(id:goldhead:20040416#p1、id:goldhead:20040620#p1)。
まあとにかく、三部屋の住人が居なくなった。これは大問題だ。ひょっとしたら、僕の知らないところでこのアパートが無くなる話があって、彼らは(たぶんあの三部屋には女性が住んでいたけれど)一足先に逃げたのかもしれない。あるいは、オーナーの不動産屋が「住民も減ってきたのでつぶすか」と決断するかもしれない。
……はたから見れば杞憂だろうか。最低でも六十四以上の部屋のうちの三つ。それも、人が移動する三月のできごとだ。だけれども、僕はこのアパートに引っ越してきてから、ある部屋の洗濯機が一つでも消えているのを見るたびに、この心配を感じ続けてきたのだ。たぶん、実家を失ったトラウマだろうと思う。そして、僕はこのアパートをおおよそ気に入っていて、なんなら死ぬまで暮らしても構わないとすら思っているのだ。
それなのに、みんなどこへ行ったんだ。誰か代わりに入居しないか。歩いて元町にも中華街にも行けるし、夜にはランドマークの夜景は見えるし、悪いことなんてあんまりないぜ。プロパンガス代は高いが、水は定額制だ。だから早く誰か入居して、洗濯機を置いてくれ。洗濯機で俺を安心させてくれ。