「ジャック&ベティ」というミニシアターがある。近所というわけではないが、歩いて行ける映画館だ。おれはこの映画館が好きだ。ただ、映画趣味者とはいいがたいので、そんなに回数は行っていない。いないけれど、面白い映画をたくさん観てきた。舞台挨拶回にも何回か行った。故・若松孝二監督をこの目で見ることもできた。楯の会の格好をした井浦新を間近で見ることもできた。貴重な体験だ。
そんな「ジャック&ベティ」に先日行った。『NO 選挙, NO LIFE』。朝一番の上映で、早く行き過ぎた。シャッターが閉まっていた。看板など見る。と、こんな文言が。「閉館待ったなし」。ええー!
というわけで、「ジャック&ベティ」がピンチになっていた。クラウドファンディングしてる。目標額は3000万円!
<クラウドファンディング 目標金額3000万円>
・昨年の漏水事故によるエスカレーター等の修繕費800万円(1000万円の内、保険適応200万円)
・デジタル映写機の入替費用 800万円
・コロナ時期の税金、社会保険料等の未払金 700万円
・コロナ時期の光熱費、賃料、リース料等の未払金 300万円
・経営改善に向けた人材費(外部発注、または社内人件費増額分)100万円
・今後数年内の想定される劇場設備修繕費 300万円
いやー、こんなことになっていたとは。エスカレーターないと、車いすの人入れないし、なにせお客さんにはお年寄りも多い。映写機がなければ映画館も成り立たないし、コロナ期の税金、社会保険料で倒産する会社が増えているというニュースも目にした。その他、いろいろ。
あー、大変だ。そう思った。「ジャック&ベティ」に通い詰めるというほどではないけれど、「この映画はジャック&ベティでやってくれそうだな」という映画はだいたいやってくれる感じだし、なんとも貴重な映画館なのだ。ブルク13だけあればいいというものではない。『福田村事件』とかやってくれる映画館が身近にある。歩いて行ける。その得難いことといったら。
というわけで、おれは存続のためクラウドファンディングにお金を出した。見返りがあったほうが楽しいので、そういうことにした。おれも金はないが、ここのところ馬券の調子もいいんだ。ぜひ存続してもらって、これまで通り。あるいは、どっかで見たが「アニメなどの上映も」みたいなこと言ってたので、あまり注目されなかったけど評判の高い劇場用アニメなどやってもらいたい。
……と、おれが手続きしたときはまだ目標金額に達していたなかったが、今見たら3000万円を超えている。とりあえずは安心だ。でも、おおければ多いほどいい。というわけで、こうして呼びかけてみる……。
けど、まあ、映画好きであっても遠方の人には関係ない。「この地方だと映画館なんて自動車で片道二時間だぞ、ぜいたくな!」と言われてしまうかもしれない。それでもまあ、なんかジャック&ベティを悪く思っていない人、あるいは「日本のミニシアター文化は守らなければならない」と思う人(おれはそこまで強い思いはないので、地元の映画館以外にお金は出せない……)、よかったらどうぞ、と。できたら、どうか、と。
そんじゃあ、せっかくなので、おれの「ジャック&ベティ」の思い出ベスト3。
『止められるか、俺たちを』の舞台挨拶回。若松孝二、若松プロの青春を描いた映画。白石和彌監督とか来てくれた。
はじめての「ジャック&ベティ」は『キャタピラー』。上のクラファンのページでも「本作は当館で最も多くの来場者を記録した作品です」って書いてある。おれみたいな初来場者もいたということだろう。若松孝二映画をスクリーンで観たのも最初ということになる。
やはり若松孝二監督の舞台挨拶、サイン入りパンフレット! これは行ってよかったな。若松監督があんな事故で亡くなるとは思ってもいなかった。でも、若松プロ魂みたいなのは残っているし、それはもう「ジャック&ベティ」で観たいと思うのだぜ。
以上。