菊の穴をほじくりかえす

 せっかくの長距離G1、それも距離未経験馬が多いからこそ、菊花賞はいつもよりも血統に比重を置いて、などと言ったところで、競馬ゲームていどの血統知識もあやしいもので、俺の血統に対する意識はなんとなく薄ぼんやりしたイメージのみといったところで、それでもなんとかすけべ心丸出しで馬券を買いたくなるところ。本当ならサドラーズウェルズ産駒のミレニアムウィングという、実にありきたりなところを買いたくも思っていたが無念の故障発生、ほかに目を向けてみれば、二冠馬メイショウサムソンが血統的にも盤石に思え、二年連続三冠馬の誕生は過去にあることではあるし、あるいは相手探しにならざるをえない。
 しかし、その相手に長距離血統を探しても、これだ! と思える馬もおらず、それでも目を凝らして見れば、俺の中でエルコンドルパサーは、母の父にサドラーズウェルズが見られることから、どうにも重いように思える種馬であって、それを父とする馬が五頭もエントリーしており、その中では母父サンデーサイレンス、母母父トニービンの流行血統の結晶、ソングオブウインド。『風の歌を聴け』といえば村上春樹、先日トライアルを快勝してのぞんだ国際G1ノーベル文学賞に負けたのは気がかりだが、本馬が借りを返せばいいのだ。誌上パドックで馬体を見ても、これはなかなかのもんじゃないだろうか。……と思ったが、牝系遡ってファンシミン、血統に暗い俺でも聞き覚えある牝系だが、どうやらヒッティングアウェーを経たこの馬の系統は短い方向きらしく、俺はどうも馬の距離適性については母方の血の方が出るのではという思いこみもあって悩むところ。
 ほかにはどうか。響きがどうにも好きになれないネヴァブションだが、母父ミルリーフは気になるところだし、トーセンシャナオーの三代母(母母母などと書かずに、最初からこうした方がスマートだった)はヨドセンリョウとこのレースに対して縁起がよさそうだが、なんとなくの予感通り調べてみれば短距離馬センリョウヤクシャの母ときた。まあこんなところで……と思ったら、メイショウサムソン以外ネファブションしか残らないのか、男の一点予想。しかし、去年を思い返せば、いたずらに距離を気にして実績馬アドマイヤジャパン軽視という失敗、今年も「所詮プロモーションの子」などと思えるアドマイヤメイン(馬主まで一緒!)や、「フジキセキの子じゃあなあ」と思えてしまうドリームパスポート(やっぱりノリだし)からしっぺ返しを食らう可能性もあり、オッズを含めてもうちょっと見極めていく必要があるだろう。アサヒライジング一本で行けた先週とは大違いだ。しかし、考えてみれば皐月賞もダービーもサムソンから行ったのだから、三つめもこれは頭に固定してしかるべきではないかとも思えてきた。