馬券の負けを見届けたおれはα65にMINOLTA AF MACRO100mm/f2.8(旧式)つけて散歩に出た。まだ根岸森林公園に梅の一本でも咲いているのではないかと思ったのだ。あるいは、知らぬ間に日も長くなり、美しい夕焼けでも撮れるのではないかと思ったのだ。
家を出てしばらく、メガネを拭いたらメガネのレンズが外れた。片方のレンズだけ伊達メガネにする撮影手法? ばかばかしい。おれは小さなネジを落とさぬよう、慎重にアパートに戻った。裸眼の世界はまるでピンボケだった。まったくボケきっていて、どこにもピントが合ってなかった。
よい具合に夕焼けてきたかと思えたが。
そんなことなかったのだった。
おまけに梅の一本すら咲いていなかった。仕事に追われて三月、三月も半ばを過ぎて、おれはまったく季節がわかっていなかった。おまけに夕焼け空にもなっていなかった。
夕焼け空が見られないのなら、夕焼き空にしてしまえばいい。世界を夕焼いてしまえ。おまえは夕焼ける人か? おれは夕焼いてしまう人間だ。
メガネ越しの世界なぞしょせんは嘘だ。おれはもっとピンぼけ人間。
スイッチを入れてしまえばいい。
敗残者の世界が栄光に転ずるその一瞬のためだけに。
>゜))彡>゜))彡>゜))彡
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……おれのは「OLD」。