身体が動かなくなる(四年ぶり二度目)

そしてなにより、身体がアホみたいにゆっくりしか動かない。動かせない。スローモーションパントマイムみたい。 

 


らくらく痩せる☆彡強迫性障害ダイエット - 関内関外日記

 

 またこれになった。とはいえ、まったく布団の中から動けなくなったこれほどひどくはなかった。スローモーションはスローモーションだが、普通の人がわざとモタモタしているくらいのものだった。とはいえ、またこれになったのだ。それは熱発でも筋肉痛でもない。動こうとしているのに身体が思うように動かない。スローにしか動かない。座り込んで丸まってしまうと、もうまるで固まってしまったようになって動かない。ベッドから這いずりおりて、小さなヒーターの前でそうなって、やばいな、って思った。

 それでもなんとか立ち上がって、服を脱いで、服を脱いだらシャワーを浴びなきゃ寒くて死ぬのでシャワーを浴びるが、またそこで座り込んでしまって身体が動かない。

ステンレスシャワーラック 2段 FH-316

 シャワーラックを仰ぎ見て、あそこに置いてあるシャンプーに手を伸ばさなければいけないと思うのに、それができない。まるで高い高い山の頂上を見上げるようにシャワーラックを見上げる。ものすごく時間をかけて頭を洗い、顔を洗い、身体を洗い、ヒゲを剃る、身体を拭く。

 シャワーから出たら裸で寒いので動きが早くなるかと思ったらそうでもなく、もたもたと服を着る。なにをするにも遅い。身にしみる寒さと脳の異常。でもパニックにはならない。おれはこれを知っているし、あのときほどひどくはない。原因も、ひょっとしたら前回同様で、希死念慮がある閾値を越えてしまったせいかもしれない。そんな想像もできる。しかし遅いものは遅い。おれはずいぶんとゆっくりと出社した。自転車にまたがってしまえば自転車が進む速度で足は回転するが、それもなにかスローだった。おれはいつもより用心深く自転車を漕いだ。

 そして、一日中、呻き、ため息、足許のストーブ(800W)に覆いかぶさる、給湯室で座り込む、仕事になんてなりゃしない。いや、それでもおれはキーボードを叩き、マウスを動かした、文字を読んだ。単純なことならできた。ただ、頭のなかが一色のブルースクリーンどころじゃなく、ひっちゃかめっちゃかで、いつも以上に気が散りまくって、いつも以上に集中力がなかった。身体はあいかわらずスローモーションで、パーキンソン病を長く患った父の父のことをひさびさに思い出した。

 単純なことならなんとかスローモーションでできる。が、年度末にスローモーションを続けるわけにはいかない。おまけにおれは調べ事をして文章を書かなければいけない。今、図書館からおれの個人的な興味で借りているのは一冊で、あとはすべて資料だ。資料を読まなければいけない。読んでわからなければ調べなければならない。なにより文章を、定められた分量に、ある期日までに、過不足なく、間違いなく、叩きこまなければならない。今のおれにはそれができそうもない。しかし、おれ以外にできる人がいない。

 今日は早めに帰宅した。えらく寒かった。文章が打てるのか、こうして試している。だが、こんなのは喋ってるのと一緒だ。なんの集中力もいらない。ただ、手が震えて打てないということもない。タッチの速度がスローモーションということもない。あとは脳だ、脳だけが問題だ。躁うつ病のうつ気味になったおれの脳が問題だ。いざとなったらけっこう前に香港から個人輸入したタイ産の食べ物でも食うか。処方薬はベンゾジアゼピン系ばかりで、おれの脳を奮い立たせるものがない。ジプレキサだって抑えつける薬だ。もっと、ウッキウキになれるやつが必要だ。今のままでは、意識が拡散するばかりで、おれはもう廃人だ。戯言ばかり口にしてほとんど自分一人を凍らせるという意味で廃人であるそうだ。