部屋の中で紛失したiPhoneを探す方法について

 

いま、部屋の中で見ていた、iPhoneが、なくなる。そういうことがある。だれにでもある。そこに置いたのか、ここに置いたのか、ちょっと置いたのか、どこに行ったのか。なに、ちょっと置いただけだと思う。三分、五分、十分……。だんだんやばい感じになってくる。ちょっと汗が出てきたりする。

 

いや、いまのいままで使っていたのだ。どこか外に落としたはずもない。ん、いま、洗濯機を回しているぞ。まさか、ポケットに入ったまま? いや、ありえない、ありえないけど、心配になる。Bluetoothのイヤホンで接続を試みる。つながった音がした。ある、部屋の中にある。それはわかった。わかったが、おれのイヤホンの操作からではiPhoneを鳴らすことができない。

 

そうだ、iPhoneiPhoneを鳴らせばいいのだ。前に「外で」落としたときも、「探す」アプリで発見できた。よし、古いiPhone SEを探そう。あれはもう電池がだめになったので、退役させてあの引き出しにしまっているはずだ。……ねえぞ。SEもないぞ。

 

というわけで、二台のiPhoneを同時に探すという困難なミッションに挑むことになる。一方で、インターネットに接続されたWindowsのノートPCとAndroidタブレットからiPhoneを鳴らせないか考える。LINE通話? いや、自分にかけられるのか? 新しいアカウントを作る? いや、まて。Slackはどうか。同じことか。え、なんで、なんかないの?

 

というわけで、おれは女の人に「すみません、部屋でiPhoneを紛失したので電話かけてください」と、タブレットからメールした。おい、競馬が始まるぞ。馬券どうやって買うんだ。いや、PCからでもタブレットからでも買えるか。落ち着け、落ち着け。

 

と、落ち着いたところでiPhoneを発見した。ベッドから落ちて、ちょっとだけ開いていた衣装ボックスの隙間に入り込んでいたのだ。女の人のLINEにさっきのなしで、と送る。しばらくして、爆笑のスタンプが送られてきた。

 

それからしばらく、おれの頭は「楽天モバイル」の呼び声とピンク色で一色になった。こういうときのために、もう一台、もう一回線持ってもいいのではないか。なんか、すごく安いんだろ。月に九百八十円とかか? それでAndroidスマホと回線。iPhoneを部屋でなくしても見つけられる。その他の用途は、まったく不明。「楽天モバイル!」。

 

が、しばらくして、「あれ、これでいいんじゃね?」って思ったことがあって、Siriに呼びかけて適当な音楽でも流させればいい。というわけで、おれはiPhoneの設定から「Hey, Siri」設定を有効にした。部屋の端っこに置いて、「Hey, Siri! くるりの曲流して!」と言った。「春を待つ」が流れてきた。悪くない。これか。

 

と、「これ」を検索してみたら、世の中の部屋の中でiPhoneをなくす人たちは、とっくにそんなことをやっていたのだ。おれはiPhone SEがあるときは、すぐに「探す」アプリに頼っていた。でも、おれたちにはSiriがいる。ふだんはぜんぜん使わないが、なんかSiriも使えるんじゃないのか。少なくとも気の迷いで楽天モバイルと契約することもなかった。悪くない。いや、なんかもう一回線、もう一つ電話番号持ってても悪くないかなという思いもあるのだが、まあそっちの使いみちが思い浮かばない。

 

(あと、ブラウザからApple IDでiCloudのページにログインして「探す」を使えるらしい。Windowsからもできるのかな?)

 

 

……Appleはなにかをなくす人間にやさしいのか?

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↓前に外で落としたときのこと。ギリギリWi-Fiが届いている家の近くの他人の車の下で見つけた。