またまた寄稿いたしました。
それにしても、タイトルの付け方がすげえよな。
おれにはちょっと書けなかった。
中身は一緒だけれど、これなんだよ、これ。
これがないからおれはパッとしないんだよな。
……って、読んだ? 読みました? 読んだね。
というわけで、おれは穂村弘・フジモトマサルの『にょにょにょっ記』を読んだわけだ。はっきり言うとね、なかなか外に出られないこのご時世、何を書いていいのかわからんのよ。だから、読んだ本で、ちょっとハッとしたことを書くくらいしかなくてな。おっさん、もう感受性とか弱まってるし、言いたいこと言い切っちゃった感じあるしな。まあいい。
で、その元ネタにさせていただいた『にょにょにょっ記』である。おれは『にょっ記』から穂村弘ワールドに入った。穂村ワールドってあるんですね。穂村ワールドに入り込んじゃうと…すごいパワーですよ、と言いたいところである。
……って、あれ、二作目の『にょにょっ記』について書いてなくね? と思ったあなたは無駄に鋭い。実のところ、長文が増えた二作目について、おれはあまり感じ入るところがなかった。iPhoneでパシャリとやるページがなかった。それが事実である。
が、なんであろうか、このシリーズ三本目の『にょにょにょっ記』は、一作目に舞い戻ったようにおもしろいのである。おれはほかの穂村弘の著作を併読しつつ、「やっぱりすげえな、このひとは」と思った次第である。
というわけで、「髪を切りに行く」以外のところで気になったところを書く。
4月19日 かまぼこ
近所の古本屋さんに行く。
古い絵葉書を何枚か買った。
会計の時、「ずいぶん前のだけど、よかったらどうぞ」ととフリーペーパーを貰った。
店主の女性が作ったものらしい。
家に帰ってから、読んでみた
お正月にかまぼこを食べたくなって買いに行ったらとても高かったので、諦めて家に帰った。
そして、冷蔵庫にあったちくわを裏返してかまぼこだと思って食べた。
日記っぽいページに、そんな内容の記述があった。
彼女のことが好きになった。
なんというか、なんかいいじゃないか。おれは前に、穂村弘の著書を読んで「恋の夢」を読んだような気になったと書いたが、それに近い。この短さでそう思った。いや、べつに恋ではないかもしれない。古本屋の店主が何歳なのかもわからない。それでも、人は人を好きになることがあるのだ。悪くない。
7月2日 降り方
「一休さん、最終回にひとりで旅に出て、さみしくてかなしかったから、テレビにたんぽぽをお供えしました。死んじゃったわけじゃないのにね。子供だったから。あ、経堂だ。それじゃ。おやすみなさい」
一緒に乗っていた人にそうい云って、電車を降りていった女性がいた。
なんて素敵な降り方なんだろう。
これも不思議な「素敵」さだ。穂村弘はときどき聴き間違える。そこから話をひろげる。ひろげるけど、ひろげすぎない。「なんて素敵な降り方なんだろう」でしめる。おれには「経堂」のイメージがわからないけれど、これは素敵な文章だと思う。
8月21日 水族館
水族館に行く。
アシカコーナーの横にこんな札が立っていた。
褒められて伸びるキュートなスミレちゃんです。
僕と似たタイプだ。
これも、いいよな。ほむほむは褒められて伸びるキュートな歌人なのである。おれも褒められて伸びるタイプだといいと思うが、なかなかどうして褒められても卑屈になるばかりであまり伸びない。伸びたらいいのにな。スミレちゃんとほむほむがうらやましい。
12月17日 はらぺこあおむし
翻訳家の金原瑞人さんからメールが届く。
「中国語版の翻訳絵本を買いました」という内容で、その画像が添付されていた。
見た瞬間にエリック・カールの有名な作品だということがわかる。
が、タイトルをみてぎょっとする。
「非常飢餓的毛毛蟲」
日本語版では確か「はらぺこあおむし」。
ずいぶん印象が違う。
まあ、国が違うからな。
にしても、「毛」が一個多くないか。
と、先日、エリック・カールさんの訃報を見かけた。おれはこうブックマークコメントを書いた。
「はらぺこあおむし」の作家死去 エリック・カールさん、91歳 | 共同通信
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ちなみに「はらぺこあおむし」の中国語版のタイトルは「好餓的毛毛蟲」。
2021/05/27 09:58
穂村弘が書いたのとは違うではないか。なぜか。おれは一応、Wikipediaで調べたのだ。そこに書かれていたのは「好餓的毛毛蟲」。時代が変われば翻訳も変わるのである(とはいえ、本書は2015年の本だ)。いずれにせよ、「毛」が多い感じは一緒なので、それを引用した。「非常飢餓的」と「好餓的」の違いはわからない。
……てな感じで、おれはこのところ穂村弘の本ばかり読んでいる。最初のおれの文章もそれに引っぱられているところはあると思う。しかし、このコロナの世の中で、外部から受ける刺激となると本などになる。それは仕方ないことだ。
え、仕方ないことだよね。そういうことで、よろしくね。