「勇気をもらった」、私の苦手な言葉です。しかし、井上尚弥の戦いは……。

モンスター井上尚弥、日本人初の3団体統一に成功 ドネアを2回TKO!264秒で倒し完全決着 - ボクシング : 日刊スポーツ

【1R】井上は布袋寅泰のリング上での生演奏というド派手演出で先に入場。ドネアは落ち着いた表情でリングインした。 ドネアがいきなり左フックをふるう。井上は距離をとり、冷静にジャブを放ちながら間合いをはかる。終盤に井上の左ストレートから激しい打ち合い。右ストレートでダウンを奪った。(井上10-8)

【2R】井上の左フックにドネアがグラつく。ロープに詰めた井上がさらに猛攻。よろめいたところに連打でとどめは左フックでドネアから再びダウン。レフェリーが試合を止めた。 圧倒的な2回1分24秒TKO勝ち。日本選手初の3団体統一を果たした。

スポーツなどを見て「勇気をもらった」という人がいる。おれにはよくわからない。そう思っていた。私の苦手な言葉です、といっていい。

しかし、どうだろう。井上尚弥vsノニト・ドネア2。これを見たおれは、なにか気が晴れた気がした。ここ数日、躁鬱の症状的には躁傾向にありながら、物書きをしながらもやもやで曇っていた。それが、井上の圧倒的で完璧な試合を見て、なにかパーッとなった。勝手な話だが、なんだかやれる、まだまだやれる、そんな気になった。

こんな気持ち、カープでも競馬でも感じたことない。

もちろん、井上尚弥は何回もの敗北を経て、晩成したボクサーなどではない。一般的な基準でははかれないようなモンスターである。フェノーメノである。むろん、他人には推し量れないような努力あってそうなった。天賦の才能はあるが、それだけではここまでにはなれない。

井上尚弥という人間とおれという人間にはなんの接点も繋がりも共通点もない。神奈川の人間だというくらいだろうか。あとは、日本人だというくらいか。

それでも、だ。それでも、井上尚弥の神がかったような試合を見て、「すごい」と思った。思って、なにかが晴れた。ひょっとしたら、それは「勇気をもらった」ということなのかもしれない。勝手におれがそう思った。

とはいえ、人々に、勝手になにか思わせてしまう、それこそがヒーロー、スターというものなのだろう。井上尚弥はそれに違いない。時代を代表し、歴史に名を刻む存在だ。

今後は、年内に四団体統一ができなければ、階級を上げるという。WBSSの勝者となったことで、団体統一みたいなもんだと思うが、まあいい。そのあたりを冷静に見据えているあたりも冷静だ。クレバーだ。完全無欠のモンスターだ。モンスターに永遠の栄光と祝福あれ。