読書

こいつはどこに歩いていこうとしているのか ― 黄金頭『ずったら ずったら 関内関外日記アンソロジー』を読む

黄金頭の『ずったら ずったら』を読んだ。まず第一に言いたいのだが、文字が小さいのだ。そして、その文字がぎゅうぎゅう詰めになっている。11編の断片がそれぞれ勝手に主張していて、それがなにかひとつの「圧」になっている。文章は悪くない。いろいろな作…

チャールズ・ブコウスキー『ワインの染みがついたノートからの断片』を読む

ワインの染みがついたノートからの断片 -未収録+未公開作品集- 作者: チャールズ・ブコウスキー,中川五郎 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2016/07/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る おれとブコウスキー、ブコウスキーとおれ(←だれ…

死に向かって、淡々と―レイモンド・カーヴァー『滝への新しい小径』を読む

滝への新しい小径 (村上春樹翻訳ライブラリー) 作者: レイモンドカーヴァー,Raymond Carver,村上春樹 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2009/01/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (9件) を見る 読んでいたようで、読…

『なぜペニスはそんな形なのか』ジェシー・ベリング

なぜペニスはそんな形なのか ヒトについての不謹慎で真面目な科学 作者: Jesse Bering,鈴木光太郎 出版社/メーカー: 化学同人 発売日: 2017/03/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る というわけで、なにもかも言ってしまうことから始めよ…

チャールズ・ブコウスキー『指がちょっと血を流し始めるまでパーカッション楽器のように酔っぱらったピアノを弾け』を読む

酒を飲み 競馬をし 詩に賭ける以上に することもなし ブコウスキー詩集―指がちょっと血を流し始めるまでパーカッション楽器のように酔っぱらったピアノを弾け 作者: チャールズブコウスキー,Charles Bukowski,中上哲夫 出版社/メーカー: 新宿書房 発売日: 19…

エミリー・ディキンスンをちょっとだけ読む

シオランの『カイエ』を読んでいると、何回か繰り返し出てくる事柄がある。モンゴル、日本、そして詩人エミリー・ディキンスンである。エミリー・ディキンスンを賛美するというか、心酔しているというか、崇めているというか、えらい調子なのである。そこま…

黄金頭さんが2018年読んだ本から5冊おすすめするの回

ブロガーいうもんは(……以下略)。 というわけで、5冊ほどよかった本をおすすめしたい。もちろんのことながら、おれは新刊などあまり読まない。読めない。死んだ人間の本の方が好きである。 シオラン 5冊、とかいっておいて、いきなり著者名というのはおかし…

シオランの『カイエ』を半分読んだ

カイエ、というのはフランス語で雑記帳、メモ帳、ノート、そんな意味である。シオランの『カイエ』。未発表の雑文がまとめられたものだろうと思って、借りた。書庫から出してもらった。出てきたのは分厚い辞書のようなものだった。「訳者あとがき」までで101…

竹内整一『ありてなければ「無常」の日本精神史』を読む

ありてなければ 「無常」の日本精神史 (角川ソフィア文庫) 作者: 竹内整一 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版 発売日: 2015/12/25 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る なんとなく手にとった一冊。 この本で言う「無常」は、釈尊の仏教のコアな…

反出生主義者よ、縮こまることなかれ ベネター『生まれてこないほうが良かった』を読む

生まれてこない方が良かった―存在してしまうことの害悪 作者: デイヴィッドベネター,David Benatar,小島和男,田村宜義 出版社/メーカー: すずさわ書店 発売日: 2017/11/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 最近の反出生主義の本というと…

たまには植物の本でも 『植物 奇跡の化学工場』を読む

おれはわりと植物の話が好きである。 べつになにかの園芸植物にのめりこむわけでも、家庭菜園をするわけでも、そこらの樹木の同定ができるわけでもないが、漫然と、漠然と好きだ。 なかでも根粒菌の話などが好きで、「なに? イネ科で窒素固定?」とかいうニ…

『超越と実存「無常」をめぐる仏教史』を読む

超越と実存 「無常」をめぐる仏教史 作者: 南直哉 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/01/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 「超越と実存」と言われると、なにやら近現代西洋哲学(よくわからない)のような雰囲気があるが、実のと…

シオラン『深淵の鍵』をざっと読む

E.M.シオラン選集〈5〉深淵の鍵 (1977年) 作者: E.M.シオラン 出版社/メーカー: 国文社 発売日: 1977/08 メディア: ? この商品を含むブログを見る 国文社のシオラン選集の最終巻である。このシリーズが出た時点でのシオランネタも尽きた、という感じの一冊で…

シオラン『時間への失墜』を読む

時間への失墜 (E.M.シオラン選集) 作者: E.M.シオラン,金井裕 出版社/メーカー: 国文社 発売日: 2004/07 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログ (1件) を見る 「おまえ、立て続けにシオランばっかり読んでるけど、飽きてこないか?…

シオラン『悪しき造物主』を読む

悪しき造物主〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス) 作者: E.M.シオラン,金井裕 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 2017/10/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「こいつ、野球と競馬とシオランの話しかしてねえな」と思われるのであれば、…

シオランの若書き『欺瞞の書』を読む

欺瞞の書 (叢書・ウニベルシタス) 作者: シオラン,金井裕 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 1995/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ……最後の暗礁は、著者その人がこの著作を忘れており、そればかりか、そこにはもう自分の姿は認めら…

こんなに面白い本があるか!(今のおれに)『シオラン対談集』を読む

シオラン対談集 (叢書・ウニベルシタス) 作者: シオラン,Cioran,金井裕 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 1998/07 メディア: 単行本 クリック: 5回 この商品を含むブログ (9件) を見る 今、シオランにハマっているおれにとって、これは非常に、とて…

E.M.シオラン『歴史とユートピア』を読む

地上楽園の信奉者たちと私との不和の、その深い理由を指摘せねばならぬとしたら、私は次のように明言しよう。すなわち、人間の抱く一切の企図が、遅かれ早かれ人間自身に刃を向けることになる以上は、理想的な社会形態を追求してもむだなことだ、と。人間の…

E・M・シオラン『崩壊概論』を読む

E.M.シオラン選集〈1〉崩壊概論 (1975年) 出版社/メーカー: 国文社 発売日: 1975 メディア: ? この商品を含むブログを見る シオラン、フランス語による初めての著書である。四回書き直したとか言っていた。1947年のことである。 本書はのちのシオランの著書…

断章は倦怠感にちょうどいい―シオラン『苦渋の三段論法』を読む

ここ何日か……と書いて、「こんなに長く感じるのに、たった何日か!」と思うのだけれど、まあともかくひどい倦怠感、鉛様麻痺、抑うつに襲われている。「襲われる」というほど派手なものではないが、ともかく身体が動かない、身体が重い。重力の偏りを感じる…

シオラン『告白と呪詛』を読む

告白と呪詛 作者: シオラン,Cioran,出口裕弘 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 発売日: 2012/05/28 メディア: 単行本 クリック: 7回 この商品を含むブログ (2件) を見る もう一つ、原著者の名前について。シオランの洗礼名はエミールであるらしいが、彼は早く…

フェルナンド・ペソア『不安の書』を読む

不安の書 作者: フェルナンドペソア,Fernando Pessoa,高橋都彦 出版社/メーカー: 新思索社 発売日: 2007/01 メディア: 単行本 クリック: 21回 この商品を含むブログ (19件) を見る フェルナンド・ペソア『不安の書」である。そう書いてみて、ちょっと説明不…

反出生主義、この世に生まれ出るという不運―シオラン『生誕の災厄』を読む

ただひとつの、本物の不運、それはこの世に生まれ出るという不運だ。起源そのものに宿っていた攻撃的要因、膨張と熱狂の原理、起源にゆさぶりをかけたあの最悪のものへの突進、そこまでこの不運の源泉を遡ることができるだろう。 おれはおれを反出生主義者で…

小田嶋隆『上を向いてアルコール』を読む

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白 作者: 小田嶋隆,木下晋也 出版社/メーカー: ミシマ社 発売日: 2018/02/26 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (7件) を見る おれはアルコール依存症なのか、そうではないのか、お…

『集中講義 大乗仏教 こうしてブッダの教えは変容した』を読む

別冊100分de名著 集中講義 大乗仏教 こうしてブッダの教えは変容した (教養・文化シリーズ) 作者: 佐々木閑 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2017/02/25 メディア: ムック この商品を含むブログ (2件) を見る 信仰は魂に属するが、宗教は知識である。 ……と…

おまえもイヌにしてやろうか - 深町秋生『ドッグ・メーカー』を読む

ドッグ・メーカー: 警視庁人事一課監察係 黒滝誠治 (新潮文庫) 作者: 深町秋生 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/07/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る カラオケのモニターを顎で指した。 「気晴らしに一曲歌っていったらどうだ」 …

海外詩文庫『ペソア詩集』を読む

ペソア詩集 (海外詩文庫) 作者: ペソア,澤田直 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2008/08/01 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 9回 この商品を含むブログ (11件) を見る 「アルベルト・カエイロは私の師である」。この言葉はペソアの全作品の試金石であ…

南直哉『善の根拠』を読む

善の根拠 (講談社現代新書) 作者: 南直哉 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/12/17 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 本書における「倫理」とは、様々な条件に拘束されながら、様々な局面である行為を選択しなければならない時々に、「自己」…

フェルナンド・ペソア『不穏の書、断章』を読む

フェルナンド・ペソアって誰や。 フェルナンド・ペソア - Wikipedia フェルナンド・アントニオ・ノゲイラ・ペソア(Fernando António Nogueira Pessoa、1888年6月13日 - 1935年11月30日)はポルトガル出身の詩人・作家。 ポルトガルの国民的作家として著名で…

南直哉『恐山 死者のいる場所』を読む

恐山: 死者のいる場所 (新潮新書) 作者: 南直哉 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2012/04/17 メディア: 新書 購入: 2人 クリック: 13回 この商品を含むブログ (16件) を見る 南直哉というと、このあいだキリスト教徒との対談本を読んで知った人である。 gol…