なにか

なにもしないことがしたいのだ

まるまる生きてみたところでたいして長くもない人生なのだから、どうかして、平凡無事に無邪気にくらしたいものだと思う。が、今迄の経験によると中々そう簡単にはゆかない。こっちではそう思っていても向こうからやってくるのだから耐らない。戦争でも始ま…

Too much, blues

この国は最後の国、あなたは最後の国の最後の国民。なにをしているの? アブチロン。私は一ヶ月後に閉鎖の決まった花月園競輪場にいます。まわりにはお年寄りたちがいます。よく知らない演歌歌手が、だれも知らない歌を歌っています。赤モツと甘酒を。 「ハ…

おれはひとり日陰で食べられる草を探している

はやく寝ないと言葉がはねない。羽根がなくなって気ままに飛べない。気ままに飛べた試しがあったろうか。家から出て十歩、舗装されていない道、雑草。 言葉ははねなくてはいけない。ア・ソンレンセ。言葉がはねて、踊ったあとに、草は芽吹き、花も咲く。雨の…

底辺を這うおれには努力というものがわからない

anond.hatelabo.jp こちらの記事を読んだ。進学校からそれほどでもない大学に行ってしまい、もっと上の大学からいいコースを歩んでいる友人たちと差が開いてしまったが、努力によって挽回しているという話だ(と思う)。 おれはこういう話のなかの、「個人的…

ぼくは『桜を見る会』に行った

「祖父が倒れたらしいので、ちょっと村に帰って様子を見てきてくれないか」。東南アジアのどこかの工場で働いている父から連絡が入った。とりわけ忙しくもない大学生のぼくは、東京をあとにして、本州最北の田舎に急いだ。季節は冬に入るころだった。 村は東…

失われた聖地・広島について

おれの父は、自らの生まれ故郷である広島についてよくこう言ったものである。 「原爆が落とされて100年は草木も生えないと言われたものだが、木も草も生えていたぞ」 そして、言外に自分も広島で生まれたのだと。 父は双子として生まれた。双子の弟は生まれ…

おれは呆けた顔でそれを眺めていた

階段をのんべんだらりと下りながら、口には昔ながらの紙巻たばこくわえて、ちょっと立ち止まってターン、腕を開いて空を。 お前は社会の底辺を這いずって、なにも残さないって歌が聞こえてきた。ガラスの瞳、球体関節、美しい素材の肌。みにくいものとは縁な…

『反出生主義を考える』(「現代思想2019年11月号」)を読む

おれは反出生主義者である。 おれが反出生主義者になったのは、エミール・シオランを読んだからではない。ましてやデイヴィッド・べネターを読んだからでもない。 おれの反出生主義は、おれというおれ以外にいないおれが生きてきてたなかで、自然とそうなっ…

セクシー・ヴィーガンの日

飼い犬に猥褻をはたらき逮捕─男の名は「セクシー・ヴィーガン(本名)」 | 「大統領候補」で「歌手」で「虫の友」 | クーリエ・ジャポン セクシー・ヴィーガンは2016年にシカゴからウェスト・ハリウッドへ移り住んだ。改名前の名前である「ヘンゼル・デバル…

ゲルツェンはPUMA、オガリョフはadidas(はたして、そうだろうか?)

一八二八年、ふたりの少年がモスクワ市をみおろせる雀が丘の上に立っていた。眼下をまがりくねって流れるモスクワ川には小さな舟が浮かび、地平線にシルエットをみせている多数の教会の尖塔や円屋根は落陽にかがやいていた。木造の民家は夕もやの中にかすん…

抑うつ状態になったことのない精神科医って普通にいるわけだけれど

※着地点が見えないまま書き始めました。 おれがおれの行きつけの医者に行くようになって何年も経つが、たまに症状などを話していると、「あれっ?」という反応をされることがある。前にも言ったような気がするんだけどな、みたいな。そりゃあ精神科の開業医…

私はどこに「いない」のか

【3868】 コンサータによって自己の連続性を失いつつある | Dr林のこころと脳の相談室 これを読んで思うたことを昼休みに書く。昼休みといってもおれは今日の午前中ベッドの上で固まっていたので、昼休みといっていいのかどうかわからない。 「赤肉団上に一…

映画感想文『天気の子』

美しい娘の物語は、年とった人たちの心にも、豊かな期待を起こさせるものと見えて、このわたしどもの国にも、そうした話がたくさん残っていて、幼い耳へ順ぐりに、吹き込まれ吹き込まれして参りました。これも、そう言う噂の一つなのです。 「神の嫁」折口信…

おれとファニー・ファニチャー・ニューヨーク、そしてクラック・ダラー・シルヴァー・アンド・ファンタジー

クラック・ダラー・シルヴァー・アンド・ファンタジーは薄汚いアパートのドアを乱暴に開けた。乱暴に閉めた。部屋の中でゴージャス・アンド・ルックルック・ステイ・アンド・ビルドに明け暮れていたおれとファニー・ファニチャー・ニューヨークは、なめらか…

ぼんやりした前提で好みを尋ねられても困るよな

dot.asahi.comこちらの記事が話題になっていた。読み応えある話だ。男性と女性、見る側診られる側。おれなどは小さい頃から小さかったから、否応なく見られるというか、逆に目に入らないものだろうな、と思って生きてきたものだが。 まあ、それはともかく、…

引きこもりのお前らよ、うまくやってるか?

www3.nhk.or.jp これまでの調べで、熊澤容疑者は「長男は引きこもりがちで、家庭内暴力があった」と供述していますが、その後の調べに対し、およそ1週間前に起きた、川崎市で51歳の男が小学生らを包丁で殺傷した事件を受けて「川崎の事件を見ていて、自分の…

さよなら失墜の平成

昼過ぎには休日出勤を終えて、赤レンガ倉庫のオクトーバーフェスっぽいもの(今はオクトーバーではない)に行こうという話が、仕事が長引いて行けなくなった。おれは平成最後の日の街なかを撮るつもりでいたのだが、結局は通勤路の写真を撮るだけに終わった…

平成最後の昭和の日に新宿歌舞伎町で詰められる

関西と船橋から飛んできた天狗に拉致されて、おれは都内某所のカラオケボックスで詰められた。おれは10曲連続で「歩兵の本領」と「メーデー歌」のちゃんぽんを歌った。歌ったあとに言われた。 「なぜ文芸誌に投稿しないのか?」 と、天狗。 「いや、恥ずかし…

いずれにせよ世界は悲しいんだ

「ド、ド、ド、ファ、ミ、ミ、ド、レ、レ、ド」 「こないだ夜おそくに牛丼屋に行ったんだ。店員が3人いて、客はおれひとりだった。おれが注文を待っていたら、客がひとり入ってきた。ところが、そいつは客じゃなかったんだ」 「ミ、ファ、レ、ファ、レ、ド、…

意識の低いやつは手を挙げろ!

このところ、いや、少し前かもしれないが、Googleに入社しただの、先っぽだけ入れただの、やけに意識の高いエントリーをよく目にした。そして、それに追従するような、機械の言葉を解する、エンジニアだかプログラマーだかの意識の高いブックマーク! とんで…

わいせつ古代都市の宇宙

「……でっかいまーら、かなまらー!」 少し遠くから祭り囃子が聞こえる。 私は公園のベンチで、一人の老人と話していた。いや、老人というにはまだ若々しい。矍鑠、という言葉がふさわしいのであろうか、白髪をたたえたその男の眼光は鋭い。 「マラは……カネで…

左耳の三つのピアスには笑えないエピソード

anond.hatelabo.jp こんなエントリーを読んだ。おれは左耳に三つの穴を開けている。耳たぶに一つ、軟骨部分(アウターコンク? ヘリックス?)に二つ。 これには笑えるエピソードはない。かといって笑えないエピソードもない。とくになにもない。 ただ、たま…

ぼくたちは電気でガンギマリになりたいんだ

吉田豪・高野政所・久田将義 ピエール瀧・逮捕と日本のドラッグ問題を語る 上の記事を読んだ。こんなことが書いてあった。 (吉田豪)K子っていう人がはっきりと書いてましたよ(笑)。「テクノのクラブ、みんなやってますよ! VJもみんなやっています!」み…

素面の人間ってなんなんだろう?

snjpn.net松本人志は作品作りについて薬物使用を「ドーピング」としたらしい。 www.sponichi.co.jp太田光は「良い面と悪い面」と言ったらしい。 このあたりの価値判断、基準というものは、とりあえず置いておく。おれもまだよくわかってないので。 しかし、…

ホワイト企業にブラック無能社員はつとめられぬ、この世の地獄

dennou-kurage.hatenablog.com ご説ごもっとも、という記事ではある。 が、おれは違和感を覚えた。例に挙げられているのが、「仕事を通じて成長をしたいと思っている人」だの、「外資系コンサルティングファームやスタートアップにそういった見返りを求めて…

おれの反出生主義について、いま一度

こんな話題があった。 「生まれることに同意していない」と両親を訴えた男性 - GIGAZINE インド・ムンバイ出身の27歳で、子どもを持つことに否定的な意見を持つ反出生主義者でもあるラファエル・サミュエル氏が、「同意なしに自分を生んだ」として両親を訴え…

今夜、インフェルノという名のバーで

おれがおれの墓になにか言葉を刻む権利があるとすれば、「偉大なる自然は長い時間をかけてこのようなものしか造れなかった」と、ラテン語で。 ラテン語で? 必要以上に卑屈になるのは、その卑屈な態度ゆえの傲岸さを演出したいがためだ。おれの言動、いや、…

東スポのある世界とない世界(なんでもない日の夕焼け)

おれは、金曜の夜に安ワインを一本開ける。 土曜日、起きるのは決まって午後二時すぎ。 おれは顔だけ洗って競馬をする、小銭が行き来する。 午後四時半、最終レースが終わると、おれはシャワーを浴びて、 コンビニに行く。 日曜日の出馬表を求めて、コンビニ…

おれの、小さな、薄い本を、よろしくおねがいします ―第三回文学フリマ京都 (2019/1/20)

夕刻、外の空気を吸うと言って職場から外に出る。空は晴れているのに、地面が濡れていた。知らない間に雨が振り、雨がやんでいたのだ。郵便受けを見ると、そこにはおれ宛の小さな郵便物があった。 おれの、おれによらない、小さな、薄い本だった。校正用に送…

平成三十一年 年頭所感

少しくたびれた靴は履き心地がいい。 もこもこに服を着込んで僕はドアを開ける。 清冽な空気が身体に染み渡って、吐く息は白い。 僕はただ、光の射すところに向かって歩みだす。 さようなら、住みなれた部屋。 さようなら、住みなれた街。 そんなに大きくな…